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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

死亡・老化・がん等の病気リスクを決定づける「究極の」体内栄養があった!

文=熊谷修/人間総合科学大学教授
死亡・老化・がん等の病気リスクを決定づける「究極の」体内栄養があった!の画像1「Thinkstock」より

 本連載では、からだのたんぱく質栄養の評価指標である血清アルブミンの高いシニアほど、老化の進行が遅く、筋力が保てることを解説してきた。すなわち、老化速度が血清アルブミンの数値に左右されるのである。ところが、この重要認識は医療従事者の間でもそれほどない。そこで今回は、超高齢社会おけるシニアの必須検査指標、血清アルブミンについて詳しく説明する。

 1980年代後半から、血清アルブミンと健康状態の関係を明らかにしようとする疫学研究が蓄積され始めた。健康科学では比較的新しい研究テーマである。体調を崩し医療機関を受診した際、まずはその原因を特定するための血液検査は誰しも経験があるだろう。

 そこで選ばれる検査項目は、病気の早期発見のためのものである。かかりつけ医の定期受診であれば病気の程度と管理状況をチェックする項目が選ばれる。しかし、日常の診療で血清アルブミンが検査項目としては選ばれるのはまれである。血清アルブミンは体の不調の原因を特定するための決定打にはなりにくいからである。

 もっとも、年に一度の人間ドックでは必須項目になっている。その理由は血清アルブミンがからだの総合的な健康リスク指標として有用だからである。血清アルブミンの測定意義を世界で最初に知らしめたのは、1989年に医学誌「ランセット」に発表されたフィリップスらによる(volume 334,issue 8766,1434-36,1989)疫学論文である。

 英国のミドルエイジ約8000名の9年間の追跡研究である。初回調査時に血清アルブミンを測定し数値レベルごとにグループ分けし、各グループの死亡者数と死因を比較している。分析の結果、血清アルブミン4.0g/dL以下のグループの総死亡リスクは、4.8g/dL以上のグループの約6倍もあることが明らかになった。

 このような関係は、心臓病がん、その他の疾患死亡など死因ごとに比較しても同じように認められている。この論文ではデータの分析は精緻に行っており、初回調査時から5年以内の死亡者を除いた分析でも関係は変わらないことも明らかにしている。調査開始から5年以内の死亡例を除いて分析する理由は、追跡開始後、間もない死亡者には死を早める病気が血清アルブミンを低くしていた可能性があり、因果の逆転がありうるからである。

 このように血清アルブミンは、遠い将来の総合的な健康リスクを予測するのに威力を発揮することがわかったのである。この論文を端緒として、ミドルエイジだけでなくシニアでも総死亡リスクの予測指標となることが世界中の疫学研究で明らかになった。血清アルブミンは老化を含めた健康の総合リスクの評価に有用なのである。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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