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トヨタ、定年社員にパートの清掃業務提示で再雇用を実質的に拒否か…元社員が提訴し賠償命令

文=Legal Edition
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トヨタ、定年社員にパートの清掃業務提示で再雇用を実質的に拒否か…元社員が提訴し賠償命令の画像1トヨタ自動車本社(「Wikipedia」より/Koh-etsu)

 9月28日、トヨタ自動車で事務職をしていた63歳の元社員男性が、定年後の再雇用で、会社からこれまでとはまったく別の清掃業務を提示されたのは不当だと主張していた裁判で、約127万円の賠償を命じる判決が出た。

 トヨタには、「スキルドパートナー」という継続雇用制度が存在し、男性は5年間の再雇用を希望していた。しかし、会社は同じ職種として再雇用される基準に、男性の能力が達していないとして、1年雇用のパートタイム職を提示していたのだ。さらに、その業務内容は事務職ではなく社内の清掃業務だったため、まるで再雇用を拒む嫌がらせのような対応にも見え、男性は提訴に至った。判決は、「実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない」と指摘している。

 そもそも雇用に際して、従業員にどのような業務を与えるかは会社に裁量権が広く認められている。その理由について、労働問題に詳しい浅野英之弁護士は、次のように話す。

「日本の伝統的な労使関係においては、終身雇用制という慣行があります。この雇用慣行により、長期的な雇用関係を前提として、年功序列によって賃金を決めるのが日本的雇用です。そのため、日本の労働法の裁判例では『解雇権濫用法理』という判例法理が形成されており、解雇は無制限には許されません。その半面、会社内における調整は柔軟に行うことができ、会社内における配置転換や業務内容の変更が幅広く認められてきたわけです」

 こうした考え方を前提にするなら、継続雇用制度のうち再雇用を行う場合、新たな労働契約を締結することになる。原則として、企業側が業務内容を変更することは自由なはずだ。しかし、浅野弁護士は「再雇用制度の実質を失わせるような不合理な変更まで許されるわけではない」と言う。

「今回のケースでは、再雇用の合意が成立していなかったことから、労働者としての地位までは認めなかったものの、『適格性を欠くなどの事情がない限り、別の業務の提示は高年齢者雇用安定法に反する』と指摘して、定年後の再雇用について、会社側の裁量を一定程度制限したかたちです」(同)

 デスクワークである事務職と清掃業務では、業務の内容があまりに違いすぎる。このような命令を会社から受けた時点で、辞めることを考えてしまう人も少なくないだろう。こうした、働く側を辞めさせるように仕向けるやり方は、これまでもリストラの手法として用いられてきた。これに対し、裁判所として一定の歯止めをかける方向性を提示したことになる。

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