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桃田健史「クルマ“周辺”」

トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立

文=桃田健史/ジャーナリスト
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トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立の画像1トヨタのMIRAI(「Wikipedia」より/Turbo-myu-z)

BMW発表会に群がるメディア

 9月末、東京のお台場で開催された、独BMWの最新型燃料電池車(FCV)のプレス発表。会場内には100人を超える報道陣が詰めかけた。会見後、BMW本社関係者への囲み取材となったが、報道陣は新聞や通信社の記者がほとんどだ。彼らが聞き出したいのは、「トヨタ自動車との関係の詳細」だ。

 この日公開された車両は、セダンとSUVのクロスオーバーである「5シリーズGT」の車体を使った実験車両。車体の前側に、水素を使って発電する燃料電池スタックを搭載。駆動するのは後輪で、同様の燃料スタックを使うトヨタ「MIRAI(ミライ)」の前輪駆動とはパワートレインのレイアウトが違う。

 技術面で公開された数値は、モーターの最大出力が150KW、最高巡航速度が時速180km、停止状態から時速100kmまでの加速にかかる時間が8.4秒。さらに、水素タンクの重量は4.5kgで、圧力が70MPaの水素を満充填した場合の最大巡航距離を450kmとした。

 この新車はすでにドイツ国内でメディア向けに公開されており、今回の発表が世界初披露ではない。それでも「トヨタとの関係」をネタに、これだけ多くのメディアが集まったのだ。

 筆者も、BMW本社のドイツ人、また会見に参加したトヨタ本社関係者に「両社の関係」について直接聞いたが、彼らは「BMWが2020年量産を目指し、トヨタも技術協力を続ける」という大まかな回答にとどめた。

 実はこの記者会見の前週、長野県軽井沢で先進7カ国(G7)による交通大臣会合があり、BMWの発表はこれと連動して開催された。だが、G7会合でもっともホットだった話題は、やはり自動運転。G7会合と同じタイミングで、アメリカの運輸省がワシントンDCで同国独自の「自動運転に関するガイドライン」を発表するなど、日欧とアメリカとの間で、自動運転に関する標準化・基準化・法整備などで「政治的な駆け引き」が強まっている状況だ。

 そうしたなか、FCVは世界市場でのメインテーマになりにくい。G7のなかでも、日本、ドイツ、そしてアメリカの一部であるカリフォルニア州が規模の大きな政策として打ち出しているだけで、他のG7やその他の世界各国にとっては「当分先の話」という姿勢である。

トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立の画像2BMWが公開した、燃料電池車の技術的な概要

桃田健史/ジャーナリスト

桃田健史/ジャーナリスト

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。
ジャーナリスト 桃田健史 オフィシャルサイト

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