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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

明治おいしい牛乳、高くてもバカ売れの秘密…価格据え置きで量1割減、飽くなき革新追求

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 久しぶりに実家に戻り、近所のスーパーに行こうとした際、父親から牛乳を買ってくるように頼まれました。その際、「明治おいしい牛乳」と銘柄を指定されたので、大変驚きました。父親は70代半ばで、普段は食品の銘柄などを指定するような人ではありません。

 そのため、「ここまでしっかりと父親の心をつかんでいる明治って、すごいなあ」と大変感心した次第です。

明治おいしい牛乳、高くてもバカ売れの秘密…価格据え置きで量1割減、飽くなき革新追求の画像2『すごい差別化戦略』(大崎孝徳/日本実業出版社)

 普段、牛乳になんらこだわりはなく、スーパーに行っても、大きなスペースを占め「特売」と書かれたPOPの下にある商品を無造作にカゴに入れるだけの筆者は、まったく気付かなかったのですが、「明治おいしい牛乳」はよく売れているようです。

 今年9月のPOSデータによる売上実績を見ると、1位の「明治おいしい牛乳」はシェア8.4%と、2位の森永「まきばの空」(4.7%)の倍近い数字となっています。しかも価格を見ると、「明治おいしい牛乳」は230円と森永「まきばの空」(158円)に対して、1.5倍程度になっています。牛乳全体の平均価格を見ても177円であり、「明治おいしい牛乳」の価格の高さが目立っています。それにもかかわらず、大きなシェアを獲得できているのですから、明治にとって、さぞや重要な商品となっていることでしょう。

明治の取り組み

 2002年に発売され、以後、順調な販売を維持している「明治おいしい牛乳」のおいしさの秘密は、特許を取得している「ナチュラルテイスト製法」にあります。一般の牛乳には加熱殺菌が義務付けられており、その際、酸素が牛乳中の成分を酸化させ、本来の風味を損なってしまっています。しかし、ナチュラルテイスト製法では、加熱前に酸素の一部を取り除くことにより、加熱時の酸化を防ぎ、生乳本来の風味が保たれています。

 ヒット商品が生まれれば、模倣するものが現れるのが世の常です。「明治おいしい牛乳」のヒットを受けて、翌年には他社から類似した製法の商品が発売されています。こうした他社の追随に対して、明治は容器における差別化に打って出ました。一般的な紙パックは開閉部が屋根型になっていますが、キャップ付き容器に変更し、子供や高齢者でも開けやすいようになっています。また、運びやすさを考慮し、横幅を狭くする工夫もされています。さらに、光を通しにくくするためにパッケージの原紙を厚くし、特別なコーティングが施されています。

 さらなるおいしさを求め、飽くなきイノベーションが繰り返されているといえるでしょう。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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