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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

35年間も膨大なローン返済した「自分の家」に、老後は縛り付けられる不幸

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
35年間も膨大なローン返済した「自分の家」に、老後は縛り付けられる不幸の画像1「Thinkstock」より

家の価値とは?

「人生最大の買い物は何?」と問われると、多くの人は「家」と答える。これまで多くの日本人にとって、家は「買うもの」、買えるのだったら「買いたい」対象であり続けてきた。

 車が売れなくなった、といわれている。以前は、車を所有することが一種のステイタスであり、憧れの対象だった。大学生になったら、とにかく運転免許を取得するのは当たり前。取れたて免許の、危なっかしい運転でレンタカーを繰り出す若者は大勢いた。

 そして、社会人になったら、まずは車を買いたい。最初はカローラから。1983年、トヨタ自動車の車、クラウンのテレビコマーシャルは石坂浩二さんの渋い声で「いつかはクラウン」と語りかけたように、人生の成功と車のステイタスは密接に結びついてきた。

 ところが最近では、若い世代の多くが車の購入には関心がない、とのアンケート調査が発表され話題となっている。

 これには世の中の価値観の変化が密接に絡んでいるのだ。車をなかなか持てなかったとき、車を所有することは、「お金持ち」の象徴だった。しかし、現在では国内における自家用乗用車の台数は5981万台(2014年3月)、1世帯当たり1.069台、どの世帯にももれなく1台の車があるという状況だ。

 車はコモディティ(汎用品)となってしまったのだ。「生活の足」としてなら軽乗用車でよい、しょせんは長くて10年くらいの使用期間だから、高い車なんて不経済だ。都心部では公共交通機関が発達しているので、電車やバスで十分。むしろ駐車代がもったいない。ときたま使いたいときのために、「カーシェアリング」があれば十分。このように車に対する考え方はどんどん変化してきている。

家の所有権

 住宅はどうだろうか。中高年世代は、これまで自分の家を持つことに大きな価値を見いだしてきた。「いつかはクラウン」と同じような感覚で「いつかは郊外一戸建て」を夢見て、サラリーマンの多くが、飲み代を減らし、昼食代も節約し、小遣いを切り詰めながら、家を買うための貯金に励んできた。

 このような涙ぐましい努力の結果、多額の住宅ローンを背負い込んで買った郊外戸建て住宅。ところが、ローンがある限りは、完全に自分の所有権ではない。金融機関の担保が課された住宅で毎日生活しながら、今度は必死にローンを返済するために働き続けた。都心まで1時間以上の時間をかけて通いながら。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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