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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

女性の「定年」、社会問題化…自身が定年で困惑、夫の定年でまとわりつかれ心身不調も

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表
女性の「定年」、社会問題化…自身が定年で困惑、夫の定年でまとわりつかれ心身不調もの画像1「Thinkstock」より

 最近、定年後の対策について書かれた本がとても増えてきました。私も過去にそういった定年対策の本を何冊か書いたことがありますし、シニア層向けのライフプランセミナーなどもよく開催するのですが、いつも満席になります。定年後のお金や暮らしの問題というのは、非常に高い関心が持たれていると考えていいでしょう。

 ところが世の中の「定年本」は、そのほとんどが男性目線で書かれたものばかりなのです。でも、これは当たり前といえば当たり前です。女性が積極的に社会で活躍する時代になりつつあるものの、現時点では会社で定年を迎える人はまだ男性が圧倒的に多いからです。かつては女性社員の多くは結婚と共に退職していました。もともと男性のほうが多い企業社会のなかで、女性が早期に結婚退職していたのであれば、定年まで働く女性の数というのは圧倒的に少なかったとしても当たり前です。

 ところが最近の職場を見ると、40代、50代で活躍する女性も非常に増えてきています。私自身が定年を迎えた5年前でも、定年間近の女性社員の人はいました。おそらくここからはさらに、会社で定年を迎える女性の数が増えてくると思います。なぜなら、男女雇用機会均等法が施行された1986年(昭和61年)頃に入社してきた大卒の女性社員の人は現在、53~55歳ぐらい。早ければあと5年くらいで定年を迎えるからです。そして、この法律によって新たに入社してきた女性社員の人数は非常に増え、かつ結婚しても退職することなく、ずっと現役でがんばって働いてこられたからです。

 私の経験からいうと、この頃に入社してきた女性はとても優秀な人が多いと思います。何せ、それまでは男性が圧倒的に優位だった会社のなかに入ってきて、目に見えない性差別と戦いながら、自分の力で自分の地位を勝ち取ってきた人たちが多いからです。そういう人たちが間もなく定年を迎えるというのは、ひとつの社会構造の大きな変化ではないかと思うのです。

「働けなくなることが怖い」

女性の「定年」、社会問題化…自身が定年で困惑、夫の定年でまとわりつかれ心身不調もの画像2『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』(大江英樹、井戸美枝/日経BP社)

 先日、この世代の女性の方とお話しする機会があった時におっしゃっていたことが、とても印象的でした。その方は「自分が定年になって働けなくなる、ということが怖い」とおっしゃるのです。「私たちは仕事で男性に負けないようにがんばってきました。そして仕事は今も大好きです。その大好きな仕事ができなくなる、というのはとても不安なのです」。

 私は男性としてこういう発想を持ったことがありませんでした。定年後に働くのは、そうしないと生活できないからで、働かなくてもいいなら働きたくないという人が圧倒的に多いでしょう。ところがその方のように「仕事が好きだから辞めたくない」というのは、私にとっても非常に新鮮な響きであったのです。そして、場合によっては定年というのは男性よりも女性にとってのほうが一大事なのかもしれない、と思うようになってきたのです。

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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