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正しい栄養摂取バランスなんか存在しない?アメリカ糖尿病学会による見解の変遷

文=吉田尚弘
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正しい栄養摂取バランスなんか存在しない!? アメリカ糖尿病学会による見解の変遷の画像1正しい栄養摂取バランスなんか存在しない!?(depositphotos.com)

 糖尿病のなかでも2型糖尿病は、インスリンがうまく効かなくなったために血液中のブドウ糖の値を適切に保てなくなり、高血糖により血管が傷んでしまう病気です。

 進行すると、手足の先端などの毛細血管、目の網膜、腎臓の糸球体などがやられはじめます。壊疽で手足の切断、網膜出血で失明、そして腎不全で人工透析しなければ死んでしまうというのが最終進行形です。

2型糖尿病は1960年代頃から先進諸国で増加に

 それほど怖い病気である2型糖尿病は、1960年代頃、つまり20世紀後半から先進諸国で増えてきました。その原因は、先進諸国のライフスタイルが変わってきたことにあると考えられてきました。

 20世紀後半の先進諸国で人々のライフスタイルを大きく変えたものは2つあります。自動車を含む家電製品の普及、そしてライフラインのインフラ整備です。

 20世紀前半まで、移動といえば歩くことが主で、自動車や鉄道の利用はまれでした。しかし、第二次大戦後にアメリカから始まったモータリゼーションは、瞬く間に先進国に波及し、人類が移動時に消耗するエネルギーは大幅に減りました。

 また、上下水道や電力の普及に続いて、扇風機、冷蔵庫、エアコンによる快適な家庭環境が完成しました。この快適な環境は、人類から「自然の外気温に合わせた体温調節」という大きなエネルギー消費のチャンスも奪ってしまいました。

 その分のエネルギーを化石燃料が代替したわけです。人々が化石燃料エネルギーの大量消費と引き換えに手に入れた快適な生活を続けていくなかで、次第に生活習慣病にかかる人々が、まずはアメリカで増えてきました。

先進国の食生活に問題があるのだろう?

 1960年代から70年代にかけて、いったい何が高血圧や2型糖尿病の患者を増やしているのだろうという議論が始まります。先進国の食生活に問題があるはずだが、では食生活のなかでいったい何が病気を起こす犯人なのか--。そのような議論が交わされました。

 そのなかで、砂糖などの炭水化物(糖質)が悪いとする学説と、脂肪摂取過剰が悪いとする学説がぶつかり合い、勝ったのは「脂肪摂取過剰が生活習慣病の主な原因である」とする考え方でした。

 生活習慣病の多くの患者さんが肥満、つまり体脂肪が増えていること、動脈硬化の病変には脂肪が付着していること、動物実験でウサギに脂肪が豊富な卵を食べさせたら動脈硬化が起こったこと、こういったことから「脂肪が悪い。コレステロールのとりすぎが悪い」というコンセプトがアメリカ政府のお墨付きを得ました。

「国民が生活習慣病にならないようにすることはとても大事である! それにはコレステロール摂取率をともかく下げるべきである!」

 このコンセプトの下に、「National Cholesterol Education Program」というプログラムが発令されます。日本語での説明は次(外部リンク)の「アメリカの肥満率を押し上げたNIHの国家的プログラムNCEP」をご覧ください。

 1980年ごろから20世紀末ぐらいまでの約20年間、アメリカをはじめとする世界中の国が、低脂肪・低カロリーの食事が生活習慣病を予防すると考えて、脂肪(コレステロール)の摂取量を減らすような運動を起こしました。脂肪を減らす一方で、低カロリーの炭水化物(糖質)を摂取すべきだとしました。

 その結果、人々の脂肪摂取量は減り、糖質摂取量は増えましたが、何が起こったでしょうか。2型糖尿病をはじめとする生活習慣病は、逆に爆発的に増えてしまったのです。(参考:「アメリカの肥満率上昇は1985年から始まっている」

 アメリカ全土で肥満率は一気に上昇し、今では3人に1人が肥満の国になってしまいました(参考:「Prevalence of Self-Reported Obesity Among U.S. Adults by State and Territory, BRFSS, 2015
」https://www.cdc.gov/obesity/data/prevalence-maps.html)。脂肪の摂取量を減らして炭水化物(糖質)摂取量を増やし、総カロリー摂取量を減らした結果、肥満と生活習慣病が増えてしまうという皮肉な結果が生まれたのです。

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