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アルツハイマーを完治できる新薬完成に光明?「臍帯血」で認知機能が回復!

文=ヘルスプレス編集部
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アルツハイマーを完治できる薬が完成する? 「臍帯血」で認知機能が回復! の画像1臍帯血で認知機能が回復(depositphotos.com)

 へその緒(臍帯:さいたい)の中を流れる血液、臍帯血に秘められた重大な役割や働きを知っているだろうか?

 「命綱」を「へその緒(アンビリカル・ケーブル)」と呼ぶように、へその緒も臍帯血も母体と胎児をつなぐ命綱(ライフ・ライン)。臍帯血を採取できるのは、出産直後の一生一度のワンチャンス。それが臍帯血の永遠不滅の絶対価値だ。

 臍帯血だけに授けられた不思議な生命力を生かした最新の知見がある。どのような研究だろうか--。

ヒトの臍帯血を投与すると高齢マウスの認知機能(記憶力)が改善

 米国スタンフォード大学医学部神経学講師のJoseph Castellano氏らの研究グループは、ヒトの臍帯血を高齢マウスに投与し、高齢マウスの認知機能(記憶力)が回復する事実を確認したと『Nature』オンライン版に発表した(「HealthDay News」2017年4月19日)。

 Castellano氏らの先行研究によれば、高齢マウスに若齢マウスの血漿を注入すると、学習能力と記憶力が改善する事実をすでに報告している。今回の研究は、高齢マウスにヒトの臍帯血を注入しても、学習能力と記憶力の改善効果が得られるのかを検証したものだ。

 その結果、ヒトの臍帯血を投与すると、高齢マウスに認知機能(記憶力)の改善が認められた。また、若年者の血漿を投与したところ、臍帯血に比べると効果は弱いものの、学習能力と記憶力の改善効果を確認できた。一方、高齢者(61~82歳)の血漿はまったく効果がなかった。

 さらに、Castellano氏は、臍帯血に高濃度に存在し、加齢に伴い減少するタンパク質のTIMP2(組織メタロプロテアーゼ阻害因子-2)に着目。TIMP2を高齢マウスに投与すると、臍帯血と同様の認知機能(記憶力)の改善が認められた。

 TIMP2は、生物学的な機能を果たす重要なタンパク質であり、細胞外マトリクス(コラーゲンのように体細胞以外の生体組織にある細胞)に存在する多くのタンパク質を制御している。ただ、TIMP2が脳の認知機能にどのような作用を及ぼすかは未解明だ。

 研究を主導したCastellano氏は、この研究によって若年者の血液に含まれる臍帯血やタンパク質のTIMP2が精神機能を鋭敏に保つために重要である根拠が示されたと強調する。

 臍帯血やタンパク質のTIMP2の効果が直ちにヒトに適用できると断定できないが、アルツハイマー型認知症の進行機序を標的とする新薬の開発につながる可能性があるのは確かだ。

白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・先天性免疫不全症などの移植医療に役立つ

 このような重要な役割を担う臍帯血(Umbilical cord blood)とは何か。

 言うまでもなく、へその緒(臍帯:Funiculus umbilicalis)は、胎児と胎盤とをつなぐ白い管状の組織だ。胎児は、胎盤につながる臍帯を通して母体から酸素や栄養分を受け取り、老廃物を母体に戻している。臍帯は、太さ約2cm、長さ約50~60cm。臍帯の中に2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈が流れている。

 分娩前に子宮口から先に離脱する臍帯脱出や、分娩直後に胎児の体のある部分に巻きつく臍帯巻絡は、胎児の仮死・死亡の恐れがあるため、臍帯は分娩後、直ちに切断される。日本では、新生児から切断・脱落した臍帯を記念に保存する風習が残っている。

 分娩直後に切断・脱落した臍帯から採取される臍帯血(約40~100ml)は、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞になる造血幹細胞を多く含むことから、1993年以降、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・先天性免疫不全症などの血液疾患の臍帯血移植に役立ってきた。また、網膜剥離・パーキンソン病・アルツハイマー病の治療への応用研究も進んでいる。

 ただ、臍帯血移植による細菌感染症、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)脳炎の発症は、骨髄移植や末梢血移植よりも多いとする指摘もある(内田直之、日本の臍帯血移植 臨床血液 Vol.57 (2016) No.5 p.531-536,doi:10.11406/rinketsu.57.531)。

造血幹細胞の有力な供給源となる臍帯血は、まさに命綱

 臍帯血は分娩後、胎盤が母体内にある時に臍帯の血管に針を挿入して採取する。母体や新生児に負担を与えずに採取できる臍帯血は、細胞が若いため増殖能力や適応力が高く、レシピエント(臍帯血移植を受ける患者)とドナー(臍帯血提供者)の抗原が完全に一致しなくても移植できる。

 つまり、適切に採取・保存された臍帯血は、移植片対宿主病(GVHD)が少ないので、HLA(ヒト白血球型抗原)が完全に一致しなくても移植できるだけでなく、少ないドナープールでドナーを見つけられるのが最大の利点だ。移植片対宿主病(GVHD)とは、ドナーの免疫応答によって臓器が攻撃される合併症だ。

 したがって、本人の臍帯血が保存されていれば、治療が必要になった時に抗原が100%一致するため、拒絶反応が起きないし、兄弟姉妹に提供できる可能性もある。造血幹細胞の有力な供給源となる臍帯血は、まさに命綱(ライフ・ライン)となる。

 臍帯血を採取する時は、指定病院を選び、担当医と相談しなくてはならない。臍帯血の保管場所は、第三者への寄付を目的とする無料の公的バンクと、個人や子供の使用を目的とする民間バンクがある。

 採取された臍帯血は、処理センターで検査・細胞処理後、液体窒素で冷凍保存される。民間バンクの場合は、保管料金(たとえば、初期費用約30万円+保管費用年間約1万円)が発生する。

 ちなみに、2006年、悠仁(ひさひと)親王を出産した秋篠宮妃紀子様は、悠仁親王の臍帯血を公的バンク「日本赤十字社関東甲信越さい帯血バンク」に提供し話題になった。

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