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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

便器市場、パナが汚れにくい特殊技術で2強の脅威に…技術流出で業界衰退の恐れ

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授
便器市場、パナが汚れにくい特殊技術で2強の脅威に…技術流出で業界衰退の恐れの画像1「Thinkstock」より

 先日、筆者が暮らす愛知県の知多半島に所在するLIXIL(旧INAX)の、便器を含む衛生陶器の工場を見学させていただいた。以前、北九州のTOTO工場を見学した際も同様に感じたのだが、型から抜かれ、焼く前の半完成品に対する入念な手作業による仕上げ、目視によるヒビのチェックといった光景は、“モノづくり大国・日本”のすごさを体感させてくれる。

「工場はそういうところだろう」との意見もあるかもしれないが、食品を中心に工場の無人化の勢いはすさまじく、人によるモノづくりを体感できる工場はそう多くはない。

便器市場、パナが汚れにくい特殊技術で2強の脅威に…技術流出で業界衰退の恐れの画像2『すごい差別化戦略』(大崎孝徳/日本実業出版社)

 日本の便器といえば、訪問させていただいたLIXILとTOTOによる2強の時代が長らく続いている。両社はいずれも陶器の便器を製造しているが、近年、パナソニックなどを中心に合成樹脂(いわゆるプラスチック)製の便器が台頭してきている。

 みなさんは陶器の便器と合成樹脂の便器、どちらが好みだろうか。

「便器といえば、陶器に決まっている」といった、これまでの使用経験から陶器を支持する人も多いかもしれない。また、質感においても陶器のほうに多くの人が高級さを感じるだろう。そのほか、一般には耐久性も陶器のほうが優れているなど、陶器の利点が目立つような気もする。

 だが、たとえばパナソニックの「アラウーノ」という商品は、便器と便座が一体で成形されているため、つなぎ目がない。よって、汚れも付きにくく、掃除しやすいなど、樹脂便器の利点は少なくないようだ。

 一般的に商品は、消費者に強く望まれれば売れる。しかし、意外かもしれないが、消費者が望んでいなくても売れる場合がある。アメリカで、あるスニーカーがデザインや価格の変更などは一切行っていないのに急に売れ出した事例があった。

 みなさん、その理由がわかるだろうか。

 理由は、メーカーが工場出荷時に靴に紐を通すようにしたためだった。従来、店頭で客が試し履きする際、店員はすべての穴ではないにしろ、靴ひもを通す必要があった。こうしたことは間違いなく店員にとって手間であり、はじめからひもを通してあるスニーカーを積極的に客に推奨した結果、売れ出したというのだ。

 こうした点に注目すると、容易に想像できる通り、樹脂の便器は軽く扱いやすいため、施工業者から高い評価を得る可能性がある。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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