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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

休日や定時後も電話対応…CSや顧客第一主義が従業員を潰す!そもそも日本人には不要

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
休日や定時後も電話対応…CSや顧客第一主義が従業員を潰す!そもそも日本人には不要の画像1「Thinkstock」より

CSが必要とされるのはどんな社会か?

 
 宅配業界の過酷さについては、かねてから指摘されてきたが、この春、衝撃的な動画が世間を騒がせた。佐川急便のドライバーが配達途中で荷物を地面に投げつけたり蹴飛ばしたりとキレまくる様子が撮影され、インターネット上で流されたのだ。これに対して、「とんでもない」と呆れる声もあったものの、同情する声も多く、改めて宅配業界の過酷さが注目されることとなった。

休日や定時後も電話対応…CSや顧客第一主義が従業員を潰す!そもそも日本人には不要の画像2『「おもてなし」という残酷社会: 過剰・感情労働とどう向き合うか』(榎本博明/平凡社)

 ちょうどその頃、拙著『「おもてなし」という残酷社会』(平凡社新書)において、CS(顧客満足)などという日本社会には不必要な概念を取り入れたのが間違いだったと指摘したところであったため、この件についてよくコメントを求められた。

 私が主張したいのは、働き方改革などといってさまざまな試みが行われようとしているが、「海外ではこんなふうにしている」「日本は遅れている」「だから日本もそれを取り入れるべきだ」といった安易な姿勢が問題だということだ。文化的要因・心理的要因を考慮しない改革は、必ず深刻な弊害を生む。

 では、なぜCSという概念は、わざわざ日本社会に取り入れる必要がなかったのか。海外に行くと、店員がたとえ笑顔を振りまき友好的な雰囲気を醸し出したとしても、けっして客の気持ちや立場に寄り添うことなく、あくまでもマイペースで動き、自分の立場で言いたいことを言ってくるのに驚かされる。そんな経験がないだろうか。

 小さなスーパーでレジに並んでいると、店員が腕時計を指差し、5時半から30分間休憩に入るから、買いたければ30分後に来てくれと言ってレジを閉める。並んでいた客たちは肩をすくめるくらいで、誰も文句を言わずにそこを離れる。日本だったら並んでいる客をさばいてからでないとレジを閉めにくいだろうが、個人主義の観点からしたら当然の権利の行使だ。

 購入した商品に不具合があり、交換を求めると、淡々と手続きをしてくれるものの、責任を感じて恐縮する様子はない。商品の不具合は生産者のせいであり、販売者の責任ではないから、個として生きる社会では当然の態度なのだろうが、日本だったら、販売者の責任ではないとはいえ、申し訳なさそうに謝り、丁重な態度で応対するはずだ。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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