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江川紹子の「事件ウオッチ」第89回

総選挙後、早くも国会軽視の安倍政権に批判続々…政治家は、内閣と国会の関係を正せ

文=江川紹子/ジャーナリスト
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総選挙後、早くも国会軽視の安倍政権に批判続々…政治家は、内閣と国会の関係を正せの画像1安倍晋三首相(首相官邸HPより)

「国難」「排除」「リセット」「草の根からの政治」……今回の衆議院総選挙を巡って、さまざまな言葉が飛び交った。その中で、私がもっとも衝撃を受けたのが、これだ。

「どんな手段を使っても、安倍政権を終わらせる」

 安倍首相が衆議院の解散を発表した後、前原誠司・民進党代表が同党常任幹事会で述べた発言の一部だ。

国民にとっての「国難」

 目的のためには手段を選ばない。これは、カルトやマフィア、あるいは独裁者が支配する国が好む手法である。まっとうな組織がとるべきやり方ではない。

 これを聞いた時に、私は「これはダメだ」と思った。それなのに、同党の中でさほどの反対もないまま前原氏の提案が同意されてしまったのに驚いた。

 目的が重要であればあるほど、手段は選ばなければならない。手段が大胆であればあるほど、その準備は周到に行わなければならない。こんな当たり前のことがわからないほど、選挙は政治家たちの理性や判断力を狂わせるのだろうか。

 もっともこの選挙自体が、仕掛けたほうは口には出さないが「どんな手段を使っても、安倍政権を続ける」ために行われたものであろうから、「目的のためには手段を選ばない」発想は今の政界では特異といえないのかもしれない。日本の政治が、まっとうでなくなっていることを、あらためて見せつけられた思いでいる。これ自体が、まさに「国難」ではないか。

 選挙後、「国難」はさらに拡大している。

 安倍内閣は衆議院総選挙後の特別国会を当初、所信表明や代表質問などを行わないまま閉じ、年内に臨時国会も行わない方針を出して野党やマスコミに批判された。

 安倍首相は、衆議院解散を発表する記者会見でこう語っていた。

「この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります」

 衆議院を解散することが、なぜ「国難突破」になるのかという疑問はさておき、その決意が本物なら、選挙後にはむしろ首相のほうから、この2つの「国難」にどのように取り組んでいくかを語り、さまざまな角度からの質問を受け、議論をしていこうとなるはずだ。

 ところが、それを避けようとする。森友・加計問題を聞かれる場から逃避したいという思いが、「国難」に取り組む意欲を上回っているということだろうか。

「謙虚」とは似ても似つかぬ「傲慢」

 しかも、国会での与党の質問時間を長くすべきという声が自民党内から出て、安倍首相は与野党の時間配分の見直しに取り組むよう指示した、という。総選挙投開票の翌日、「今まで以上に謙虚な姿勢で真摯な政権運営に努める」と述べた。他の閣僚からも、口々に「謙虚」という言葉が発せられた。その舌の根も乾かぬうちに、これである。

 政府から提出される法案は、事前に与党に提示され、政府からの説明や議論がなされている。国会への提出は、そうした議論を反映したうえで出されている。そのため、国会では野党の質問に多くの時間を配分するのが慣例だ。

 問い質したいことは、野党に多いのは当たり前。昨年11月に衆議院内閣委員会で行われたカジノ解禁を決める「統合型リゾート(IR)整備推進法案」の審議では、自民党議員が持ち時間を余らせ、般若心経を唱えて解説を行ったり、夏目漱石に関する持論をぶったりと、まったく関係のない話をだらだら続けて時間を消費した。

 また、国会が政府をチェックして三権分立を機能させるうえでも、野党に多くの時間を配分させるのは理にかなっている。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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