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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

患者が治らない状態をキープして儲ける病院、成果に無関係に治療費を支払わせ続ける病院

文=新見正則/医学博士、医師
患者が治らない状態をキープして儲ける病院、成果に無関係に治療費を支払わせ続ける病院の画像1「Thinkstock」より

 今日は医療費のお話です。“極論君”が言います。

「医療費は最初に契約を結んで、それが達成されないとき、または満足できないときは、全額返金とするシステムが望ましい。最初にお金をもらって、そして返金というシステムが理想だ」

“常識君”のコメントです。

「江戸時代などは、医者にかかると治療代はあるようでないものでした。まず江戸時代には医師免許はありません。規則上は誰でも医師になれたのです。そして今の日本のような全国を網羅する保険システムがあるわけもなく、医療費は適当でした。しかし、ある程度の相場というものはあったようです。支払いも多くが後払いであったように、武家や大店の商人を相手にするような場合は、医療費も後払いであったようです。医師に診てもらえるのはある程度の階層以上の人で、多くは医者とは無縁の生活を送り、病気になれば民間療法でしのいでいました。

 そんな医療とは無縁の人が致し方なく医師にかかれば、そして比較的高額であれば、後払いでは医療費を取り損ねます。ですから、庶民相手の医師ではその場で医療費を請求したという記載が多数あります。しかし、極論君が言うように、最初にお金を頂いて、その後満足できないときは返金というシステムは見たことがありません。なぜ極論君はそんなシステムがいいと思うのですか?」

 極論君のコメントです。

「今の医療は満足できる・できないとは無関係に、お金を支払っています。レストランでまずい食事を食べても、オーダーした以上は客の責任だから全額払えというシステムです。それでは医療サイドの向上もあまり望めませんし、また患者の満足感も不十分と思っています。今の医療では、患者の訴えをすぐに治せる医者よりも、なんとなく症状を軽くして、でも治らない状態を維持して患者さんをキープしている先生のほうが儲かります。また、手術でも1回で成功させるよりも、合併症が起こって何度も手術を行う病院のほうが儲かるシステムです。それは結果よりも行った医療行為に対して支払いが行われているからです。そんなおかしなシステムは改善すべきと思いませんか?」

全額返金制度

 常識君の意見です。

「確かに極論君の言うとおりです。しかし、医療は最善を尽くしても残念な結果に終わることも少なからずあるでしょうから、満足感だけを指標に支払いを決めるというのは、いかがなものかと思います」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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