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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

私がベビーシッターの積極的活用を勧める理由…コストは将来必ず回収できる

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表
私がベビーシッターの積極的活用を勧める理由…コストは将来必ず回収できるの画像1「Thinkstock」より

子連れでまともに仕事ができるのか問題

 皆さんは「アグネス論争」をご記憶でしょうか。若い世代の方にはまったく馴染みがないかもしれません。歌手のアグネス・チャンさんが子連れでテレビ番組の収録に来たところ、世間から批判を浴びた、という事例です。論争から30年たった今でもなお、大半の会社では子連れで出社することは認められていません。

 今年2月に出版した拙書『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社)でも、この子連れ出勤の問題に触れました。ハイスペック女子の仕事と子育ての両立は、少子化が進む日本では特に大きなテーマになりえます。私自身もシングルマザーとして娘を育てながら仕事をしていますが、子ども、とりわけ乳児を抱える女性の現実は、子どもを持ったことのない人、また男性にはなかなか理解してもらいにくいと肌で感じています。突然の出勤命令や、病気で子どもを保育園に預けられないという切羽詰った状況で、仕方なく職場に子どもを連れて行かざるを得ないことはどうしても出てくるでしょうし、これは本当に辛い状況です。

私がベビーシッターの積極的活用を勧める理由…コストは将来必ず回収できるの画像2『ハイスペック女子の憂鬱』(矢島新子/洋泉社)

 その一方で、子どもを職場に連れてくることが仮に理論上可能だとしても、産業医としての観点から、業務の性質上、子どもがいては危険な職場というものも当然あります。また危険でなくても、社員が集中して仕事ができる環境であるかどうかという点も大事でしょう。とりわけ、集中力を必要とし、かつ過重労働となりがちな現場では、子連れ出勤をする社員が増えたら生産性がある程度落ちることは避けられそうにありません。こうした状況を考えれば、社内保育室を設置するなど、作業場とは完全に分離することを前提に対応を考えていくのが現実的だと思います。

 私は、子どもがまだ1歳ぐらいの小さいときに、とある市の保健所に勤務をしていました。保健所の業務のなかには、たとえば予防接種や健診などの実施が含まれていますが、そうした行事がある日にたまたま子どもが熱を出しても、仕事をドタキャンするわけにはいきません。また、保育園にも預けられずにどうにもならないからといって、保育室がない職場に簡単に子どもを連れていくわけにもいきません。「自分がもし自営業だったら、職場でベビーシッターを雇うことができるのに……」と、何度もくやしい思いをしたものでした。その後、実際に私も子育てと仕事の両立のために独立しましたが、よく聞いてみると、医師と同じ専門職である弁護士も、女性の場合、開業して仕事をしながらベビーシッターに子守りをさせることが結構あるようです。組織勤めと違って、自営はある程度融通がきくのです。

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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