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江川紹子の「事件ウオッチ」第99回

【森友文書改ざん問題】で揺らぐ民主主義の根幹ーー政局話に矮小化せず、事実の解明を

文=江川紹子/ジャーナリスト
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【森友文書改ざん問題】で揺らぐ民主主義の根幹ーー政局話に矮小化せず、事実の解明をの画像1安倍晋三首相(日刊現代/アフロ)

 森友問題での財務省の決裁公文書の改ざんは、衝撃的だった。

 不心得な人間が、自分のミスを隠そうとして行った個人的な不祥事とは違う。組織的な行為である。しかも、土壇場まで、シラを切り通そうとした形跡もある。

“不都合なことはバレるまで認めない”政権と財務省

 民主主義の基本は、国民が正しい情報を知らされ、それに基づいて判断し、自分たちの代表者を選んで政治の方向性を決めていく、というところにある。

 それにもかかわらず、国民の代表であり、国権の最高機関とされている国会に虚偽の資料が提供され、国民全体の奉仕者であるべき公務員から嘘の答弁がなされてきたのだ。

 昨年10月の衆議院総選挙では、森友・加計問題も争点のひとつだったが、有権者の多くが「特に問題はなかった」と判断したからこそ、与党が勝利したのだろう。

 そのうえ、文書の改ざんは今回が初めてなのかも、いまだにわからない。これまで、この国で築かれてきた民主主義(と思っていたもの)の基盤が、実はグズグズに朽ち果てていたことが明らかになったのが今回の問題だ。ここは徹底的に事実を解明し、なぜこのような問題が起きたのか、その背景も含めて明らかにしなければならない。

 ところが、政府、与党、野党いずれも、事実解明をよそに、安倍政権をどう維持するか(あるいは倒すか)という政局話に終始しているように見えてならない。

 まず政府。国交省が今月5日に改ざん前の文書が存在する可能性を首相官邸に伝え、翌6日には安倍首相にも報告がなされるまで、安倍首相は事態を知ったのは11日という説明を国会(14日の参院予算委員会)にしてきた。官邸は、今になって5日や6日の情報は「可能性」だったから、という説明をしているが、そうであればその旨を、14日の時点で答弁すればよかった。事実を伏せることで、できるだけ責任を小さくしようという不誠実さを感じる。

 不誠実という点では、財務省はさらに際立っている。5日には国交省から改ざん前の文書のコピーを渡されていたのに、8日に「現在、近畿財務局にあるコピーはこれがすべて」として国会に改ざん後の文書を開示した。当時問題になっていたのは、改ざん前の文書の有無であって、それが近畿財務局にあるのか、本省理財局にあるのかが問われていたわけではない。それにもかかわらず、「近畿財務局にあるコピーは」との条件をつけるレトリックで誤魔化し、時間稼ぎをしようという意図がみえみえだ。改ざんを隠し通せる道はないか、模索していたのではないか。

 こうした態度から浮かび上がってくるのは、「不都合なことはバレるまで認めない」という基本姿勢だ。

 政府は、麻生太郎財務相をそのまま据え置き、彼の指揮で財務省の内部調査を進めるとしている。麻生財務相は今月11日、佐川宣寿・国税庁長官(前理財局長)が辞任した際、「国税庁長官として不適任という意識は私にはない」と発言。ようやく財務省が改ざんの事実を認めた12日には、「理財局からの指示で書き換えが行われた」「佐川の答弁と決裁文書との間に齟齬(そご)があった。佐川の答弁に合わせて書き換えたのが事実だ」と述べた。まだ事実調査は緒に就いたばかりだというのに、もうストーリーは出来上がっているのである。

 このような大臣の下で、文書の書き換えを行い、かくのごとき不誠実な態度をしてきた当該省庁が行う調査に、国民は果たしてどれだけの信頼を置くだろうか。

今の野党の追及姿勢で真相が解明されるのか

 一方、与党も「すべての責任は財務省にある」という見方で、政権を守るのに必死のようである。西田昌司参院議員は、参議院予算委員会で「なんで報告しなかったんだよ」「まさに、財務省による、財務省のための、情報操作なんだよ、これは」と現理財局長を怒鳴りつけた。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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