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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

あなたも、いつの間にか嘘をついている…無意識の記憶違いが、人間関係トラブルの元凶

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
あなたも、いつの間にか嘘をついている…無意識の記憶違いが、人間関係トラブルの元凶の画像1「Gettyimages」より

記憶にございません」はウソの証拠?

 記憶というのは、政治家や官僚にとって非常に便利な言葉のようだ。

「記憶にございません」
「私の記憶するかぎり、そのようなことはありません」

 このところ政治家や官僚がこのようなセリフを口にする場面が多いが、なぜこんな言い方がまかり通るのか、じつに不思議である。というのも、これらは「私の答弁はウソです」と言っているようなものだからだ。

「そういった発言をした記憶はございません」というのは、「そういった発言をしました」と言っているのと同じだ。なぜなら、本当に発言していないのなら、「そういった発言はしていません」と言うはずだからである。「私の記憶する限り、そういうことはありませんでした」というのも、「そういうことがありました」と言っているのと同じだ。本当にそういうことがなかったのなら、「そういうことはありませんでした」と言うはずだ。

あなたも、いつの間にか嘘をついている…無意識の記憶違いが、人間関係トラブルの元凶の画像2『記憶はウソをつく』(榎本博明/祥伝社新書)

 わざわざ記憶を引き合いに出さなければならないのは、いざウソがばれたときに、記憶のせいにして非難されるのを防ぐためだ。

 記憶のせいにしてウソをつくのは、何も政治家や官僚に限らない。ビジネスの場においても、「そんなことを言った記憶はありません」「そんな約束をした覚えはありません」などと、記憶のせいにする姿勢が見えたら、これは怪しいと思うべきだろう。

 記憶のせいにすれば、万一ばれた場合も、ウソをついたことにはならない。「うっかりしてました」「記憶違いでした」ですむ。

 そんなふうに便利に悪用されがちな記憶だが、なぜそうした使われ方がまかり通るのか。それは、誰もが記憶のスレ違いという現象を日常的に経験しており、記憶というものが極めて曖昧な性質を持つことを知っているからだ。

 ここまでみてきたことは、「意識レベルの記憶のウソ」ということができる。それに対して、「無意識レベルの記憶のウソ」というものがある。そこでは、本人自身が自分の記憶に騙されるのである。

記憶はねつ造できる?

 記憶が無意識レベルでウソをつくということになると、私たちは自分自身の記憶に騙されることがあり得ることになる。記憶の曖昧さについては、誰もが日常的に経験しているはずだが、「あなたの記憶はじつは偽物です。ねつ造されたものなのです」などと言われても、にわかに信じることはできないだろう。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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