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高橋暁子「ITなんかに負けない」

女子高生、インスタ等で「最低2つ」アカウント利用の理由…「自分のポジション」の時代

文=高橋暁子/ITジャーナリスト
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女子高生、インスタ等で「最低2つ」アカウント利用の理由…「自分のポジション」の時代の画像1「Gettyimages」より

 デジタルアーツの「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2018年3月)によると、SNSの裏アカウントの所有率は子ども全体では39.6%、女子高生では68.9%に上った。

 理由は、「誰にも知られたくない感情が言えるから」が35.9%、「趣味が合う仲間と深く繋がれるから」が35.9%、「ストレス発散に言いたいことが言える」が26.9%だった。

 なぜ10代の若者たちはSNSで複数アカウントを所有するのか。そこに危険はないのだろうか。

気遣い・使い勝手で複数アカウント作成

 裏アカウントがあるということは、本アカウントもあるということだ。つまり、複数アカウントを運用しているということになる。

 SNSにおいて複数アカウントが運用しやすいのはTwitterとInstagramだ。どちらも公式アプリに、新しいアカウントを追加・管理する機能がついている。Facebookでは規約で実名制と1人1アカウントという決まりを明らかにしているが、TwitterやInstagramは匿名性が高い。また、情報収集のために利用するユーザーが多いので、複数アカウントと親和性が高いのだ。

 ある大学の1年生数十人に話を聞いたところ、ほぼ全員がTwitterで複数のアカウントを使い分けていた。多い子では8個ほど、少ない子でも2個程度は持っていた。アカウントの種類は、大学用の本垢(アカウント)、高校の友達用垢、趣味の情報をやり取りするための趣味垢、親しい友人だけに公開する裏垢、誰にも公開せずネガティブなことをつぶやく闇垢など、人によってさまざまだった。

 彼女たちに聞いたところ、「高校の友だちは大学のことは興味がないと思うから、関係ないことが流れていかないようにアカウントを分けた」「高校時代の人間関係とか投稿したこととか大学の友だちには見られたくないから」など、気を遣った結果アカウントを分けているケースが多い。

 一方、「情報を取得する際に、趣味関心や人間関係でアカウントを分けておくとほしい情報だけが取れるから」と使い勝手で分けている人もいる。Twitterにはリストという機能があるが、アカウントを使い分けることでリストのような使い方をしているというわけだ。

クラスの居場所のために作成することも

 別の機会に女子高生たちに聞いたところ、「友だちにどう思われるかが大切で、それによってクラスのポジションが変わる」「趣味とかネガティブなこととか、知られたらポジションが下がりそうなことは絶対に言えない」と言っている子が多かった。女子高生のほうが世界が狭く、クラスのなかでのポジション取りがかなり大切ということだ。

 同時に女子高生たちは、一度できてしまった自分のキャラクターを変えることに苦労していた。進学時などにキャラクターを変えて改めてデビューしようと目論むが、SNSなどで以前の姿を知る友人などとつながっていると過去をばらされて、“キャラ変”に失敗してしまうようなのだ。

 また、ツッコミ役、ボケ役、明るいキャラなどの必要とされるキャラクターのほうが受け入れられやすいため、キャラを決めると都合がいい。

「クラスにツッコミ役がいないと思ったから、自分がツッコミ役になることにした。自分の本来のキャラじゃないけど、居場所になるからいい」

 ただしキャラクターをつくりすぎてしまい、本来の自分を出せずに苦しむ子も少なくない。

「本当の自分を出したら居場所がなくなってしまう。だからクラスの友だちには言いたいことが言えない」

 女子高生たちは世界が狭く自由にならない。だからこそクラスでのポジション確保に躍起になるし、複数アカウントをつくって乗り切ろうとする。もちろん、本音が言えたり相談できる相手がいないより、ネットだろうとあったほうがいいのは確かだ。しかし本当は、自分を理解する友だちや家族に本音を言えたり相談できるのが、理想的なのではないか。

「リアルに相談できる人がいること」が大切

 ご紹介した大学生たちのように、気遣いや使い勝手のために複数アカウントをつくり、使い分けることには問題はなさそうだ。しかし、女子高生たちの例のように、本音を言える相手がいないことは問題があるのではないか。

 デジタルアーツの同調査では、女子高生が困った時の相談相手は、「学校・地元などの友達」が65.0%でトップ。17.5%がネット上の友達にも相談していた。家族や友だちに言えないことは、ネットで匿名アカウントを作成して相談することにつながってしまうのだ。

 繰り返すが、ネットでも相談できる場があることは大切だ。しかしこのような事態は、最近多発しているTwitterで悪い大人が相談を逆手に取り、女子中高生などを呼び出す事件につながる可能性がある。

 なお、男子高生の29.1%、女子高生の16.5%が、相談相手は「特にない」と回答しており、相談する相手がいない子が一定数いることがわかっている。周囲の大人は子どもが小さいうちから相談に乗ったり、相談できる友達が周囲にいるか確認しておくべきだろう。
(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


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