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がん保険は本当に必要か?“カラクリ”をライフネット生命岩瀬大輔が解説

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がん保険は本当に必要か?“カラクリ”をライフネット生命岩瀬大輔が解説の画像1岩瀬大輔氏
 テレビや新聞で広告を目にしない日はない医療保険――、そもそも医療保険に入るべきなのか? 保障の範囲はどこまでにすべきか? そのカラクリについて、インターネット専業生命保険トップシェア・ライフネット生命保険副社長で、昨年12月に『がん保険のカラクリ』(文春新書)を上梓した岩瀬大輔氏に聞いた。

「2009年に『生命保険のカラクリ』(文春新書)を上梓しました。この本は、ライフネット生命保険を共同創業者の一人として立ち上げ、生命保険(以下、生保)業界の内側に入ってみて、初めて知り驚いた保険業界の慣習、保険会社の収益構造などを新鮮な感覚を持って見るうちに、多くの方と共有したいと思ったことがきっかけでした。ただ、本当に書きたかったことは、生保市場の主役として死亡保険に取って代わりつつある医療保険の問題でした。

 テレビや新聞では、医療保険の広告を目にしない日はありません。しかし、消費者にとって商品内容を理解する上で必要十分な説明をしないまま、加入に誘導する営業職員も少なくありません。大きな情報格差が存在する生保契約者に対して、このような売り方はフェアではない。その情報格差を埋めるべく、また、そもそも医療保険とは何かを考えてもらおうと、今回、『がん保険のカラクリ』を上梓したのです」(岩瀬氏)

 実際に医療保険の保障として必要な範囲はどれくらいか?

 例えば、公的医療保険には保険の対象となる標準的な医療行為(保険診療)を受けている限り、医療費の7割はこの公的保険によってまかなわれ、患者は原則として3割の自己負担で済む現在は(70歳以上は1割負担)。さらにこの3割の自己負担も公的医療保険の「高額療養費制度」によって、原則として、平均的所得の世帯であれば、1カ月当たり約9万円が自己負担の上限となるのです(70歳以上は毎月4万4400円)。

「保険の本質が『めったに起こらないが、起きた場合にダメージが大きい損失に備える』ことにあるとすれば、自己負担が高額になったときに公的医療保険が費用を肩代わりする高額療養費制度こそ、保険の柱になります。この制度のおかげで、医療費の自己負担額は実際にはそれほど高くなく、ある程度の貯蓄があれば民間医療保険は不要ではないかという主張も成立します。しかし、この制度はあまり知られていないのが実情です」(岩瀬氏)

 この高額療養費制度を明確にすることなく、医療費の自己負担額が極めて大きいかのように訴えかける広告が多いのが実情だ。このほかに自己負担となる金額は、主なものとして個室を選んだ場合の差額ベッド代、未承認の抗がん剤などを使用した場合の薬代、「先進医療」と定義された医療技術を用いた手術等を行った場合の治療費などがある。  

 つまり、標準的な医療を選択している限りにおいては公的医療保険の給付対象となるために、民間医療保険によってカバーすべき範囲はそれほど大きくないということがいえるのだ。

●がん保険は「診断給付金」が何回支払われるかがポイント

 しかし、圧倒的な人気があるのが医療保険、なかでもがん保険は、日本の民間医療保険の特徴的なものかもしれない。

「欧州の保険会社に勤務する英国人の友人に、世界各国のがん保険市場規模に関するデータを送ってもらえるよう依頼したのですが、がん保険は北東アジア(日本、韓国、台湾だけ)でしか流行していないということがわかりました。国ごとに民間の医療保険が果たす役割も異なってくるので、流行する商品が異なっていてもそれ自体に驚きはありません。韓国、台湾は保険のシステムが日本に似ています。欧米では心臓病や脳梗塞など他の病気に関する保障も含めた『重大な疾病保険』として販売されていますが、がんに特化して保障する保険は見当たらないのです」(岩瀬氏)

 データを見ると、がんは「2人に1人がかかる」時代。しかし、がんにかかったから、ただちに死亡するというわけでもない。死亡率は罹患率よりもずっと低い。たとえば、30代であれば、0.5%の男性が罹患して0.1%しか死亡していない。これに対して、70歳では男性の罹患率26%に対して死亡率が11%、女性の場合は罹患率12%に対して死亡率は5%だ。半数以上の人は生存している。

「いつかは自分も罹患する、そう考えるくらいがちょうどいい。ただし、がんでも、治療費用はそれほどかかりません。データによれば、実際にはがん経験者の3人に2人の割合で50万円から100万円程度の出費で済んだと回答しています。一方で、がん未経験者の半数以上が300万円以上かかると心配しています。ここにも情報格差があるわけです」(岩瀬氏)

BusinessJournal編集部

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