石黒不二代(ネットイヤーグループCEO)

シリコンバレーでホットなインキュベーションの”今”を読み解く5本

シリコンバレー(「Thinkstock」より)
 シリコンバレーのホットな話題を中心に、毎回さまざまなテーマを取り上げていきます。第1回目の今回は、インキュベーションに焦点を当てます。

 Y Combinatorや500 Startupsなど、シリコンバレーでは数年前から新しいタイプのインキュベーターが人気です。日本でも同様にこの種のインキュベーターがぽこぽこ登場しています。しかし、新種のインキュベーターの実態は、意外に知られていません。

Did everybody see what just happened? The pendulum has swung. – BLOG By Jason Freedman(4月8日)

 42Floorsをはじめ複数の起業をしているJason Freedmanがブログで明らかにする、Y Combinatorの実態。65社が500人の投資家の前でプレゼンテーション。

 ビジネスプランと呼べるようなものはなく、以前に投資を受けたことがない、素人のような起業家(と彼は評しています)が2分半のピッチ(時間単位)で億単位のシードマネーを集める。さらに、彼は自分が2009年にやはりY Combinatorで行った起業のデモを思い起こします。投資家は今とは違ってハングリーでなく、まったく投資が集まらなかった時代です。 そして、Jason Freedmanは、今の過剰投資の状態が起業家にとっても決していいことではないと警鐘を鳴らします。

 過剰投資の時代にJason Freedmanが唱える「起業家がやるべきこと」とは、

・価格(バリュエーション)でなくパートナーを最適化すること
・長期にわたっていいパートナーとなる人をゆっくり選ぶこと
・それでも今たくさんパートナーを集めること
・転換社債のすすめ

 マイクロファイナンスの時代に、バブルに踊らされることなく、投資環境の変化に対応するための良ブログ。

On | Y CombinatorとDST、アーリーステージベンチャーの企業価値をさらに釣り上げる – 渡辺千賀氏のブログ「ON, OFF AND BEYOND」(2月14日)

 Y Combinatorの話なので、今シリコンバレーに在住していて、先日の来日時に一緒にFacebook上場がらみのパネルをさせていただいた渡辺千賀さんのブログ「ON, OFF AND BEYOND」の一節をご紹介。日本語なので要約は省きますが、要するに、素人エンジェル投資家がうようよいるシリコンバレーでY Combinatorがいかに投資をしやすくする仕組みをつくって、結果としてかなりバブってしまったという話です。Jason Freedmanが言っていた、転換社債がよく解説されているので勉強になります。

Ginzamarkets社にY Combinatorのことを聞いてきた – 「YOMIURI ONLINE」(2011年11月20日)の連載「磯崎哲也の『起業案内』

「じゃあ、いったい Y Combinatorの実態は?」ということで、磯崎哲也さんが「YOMIURI ONLINE」で書いていたので、せっかくであれば、日本語のほうがわかりやすいということでピックさせていただきました。日本のインキュベーターとかなり違いがあることがわかります。渡辺千賀さんも言っていましたが、そもそも場所貸しなどは興味なし。ひたすらピッチと投資です。注目してもらいたいのは、中段の「日本では、300万円くらい投資して30%くらい投資家が取るというケースも聞くんですが、どう思われますか?-それは多過ぎでしょう!」という段です。私も千賀さんと同じパネルで同じことを聞き、2人で口をあんぐり開けていました。こうして、アメリカの起業家と日本の起業家は差ができていくのですね。

Y Combinator HP

 当たり前ですが、一応、当該インキュベーターのサイトのご紹介。もちろん、Y Combinatorは、投資家が投資するデモデーの前に自らが投資します。平均投資額は1万8000ドルですから、日本円にして150万円というところですね。もっとも最近は「65社に投資」とあるので、それでもかなりの額になります。投資された企業はシリコンバレーにあるY Combinatorで3カ月教育を受け、デモデーに備えます。画像があるので、雰囲気がわかります。アル・ゴア太りましたね。

Request an Invite > 500 Startups Demo Day – 500 Startups HP

 Y Combinatorのことばかり書いてきたので、申し訳ないので 500 Startupsのデモデーに参加したい投資家のための応募フォームです。NYやシカゴでもあるんですね。満員御礼なので受付できないかもしれないそうです。

石黒不二代/ネットイヤーグループ株式会社CEO

国内メーカー、外資系の投資銀行やジュエリーブランドを経て、米スタンフォード大学ビジネススクールに留学。MBAを取得後は、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業し、大手電機メーカーや自動車メーカーを顧客に持つなど、瞬く間に軌道にのせた。その後、ネットイヤーグループ創業に参画し、わずか10年で年間売上高35億円、大手グローバル企業を中心とする150以上の顧客を持つまでに成長させる一方、経済産業省IT経営戦略会議委員などの公職も務めている。

Twitter:@fujiyo

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