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日本板硝子外国人社長失敗の背景

東京電力と同格のBa3まで落ちた日本板硝子

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 だが、藤本氏は業績不振を理由に解任を言い渡すことはしなかった。自発的に辞任を申し出るように仕向けた。ここが、いかにも日本流だ。ネイラー氏にしてみれば、実権が伴わないCEOなんかやっていられるか、というのがホンネだろう。これで、藤本氏の外国人社長の起用は2度失敗した。

 同社は06年6月に、売上高が2倍の英ピルキントンを6160億円で買収。「小が大をのんだ」と騒がれた。買収の立役者は当時社長だった藤本氏。タレント・千秋(40)の父親として知られ、主力商品のイメージキャラクターに娘を起用したり、DVD「千秋の誰も知らないガラスの話」のプレゼントキャンペーンをやったりして、「公私混同もはなはだしい」とブーイングを浴びた御仁だ。

 もともと日本板硝子は国内が中心だった。ピルキントンを買収して中国や南米など世界約30カ国に幅広く展開するグローバル企業へと大転換を図るためには、経営のノウハウもなければ人材もいない。そこで妙案を思いつく。グローバル経営について経験豊富な外国人に社長を任せ、自分(=藤本氏)は社長の監視役になればいい。

 08年6月、藤本氏は自分の後任社長にスチュアート・チェンバース氏を起用した。買収したピルキントン出身の外国人を本体のトップに据えるという仰天人事である。この人事について、藤本氏は「プロ野球でもサッカーでも、日本のチームだからといって日本人が監督になる時代ではない」と胸を張った。外国人監督を次々と引っ張ってくるJリーグのオーナーに自分をなぞらえた。

 さらに仰天する事態が起きた。09年8月、チェンバース氏は「社長職にとどまると16歳の息子が見知らぬ他人になってしまう」との迷言を残し、家庭の事情を理由に突然辞任を表明して、さっさと英国へ帰ってしまった。

 慌てた藤本氏は社長に復帰し、後任探しに奔走。10年6月、米化学大手デュポンの元上席副社長を務めた米国人のクレイグ・ネイラー氏を代表執行役社長兼CEOにスカウトした。
しかし、ピルキントン買収が完全に裏目に出る。売上高の4割を占めるピルキントンの本拠地、欧州でギリシャの債務危機に端を発した景気の停滞が起こり、深刻な販売不振に陥った。成長分野と期待した太陽電池用ガラスも需要が急減。買収時に膨らんだ約3800億円に上る有利子負債(11年末時点)が重くのしかかる。12年3月期の最終損益は、約30億円の赤字になる見通しだ。さらに250億円のリストラ費用が13年3月期に発生することから、赤字継続の可能性が高い。

 ここで、再びピッチャー交代。日本人の社長を起用したことについて、「日本人にも(グローバル化の)資質を備えた人材が育ってきた」と、藤本氏は苦しい弁明に追われた。格付け会社、ムーディーズ・ジャパンは3月12日、日本板硝子の格付けをBa3とした。これは東京電力と同じ。グローバル企業に大変身するという藤本氏の公約は、マーケットからまったく信用されていないのである。
(文=編集部)

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