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『「有名人になる」ということ』好評記念対談(3)

【対談】勝間和代・安藤美冬「一発屋と定番の分かれ目」

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【対談】勝間和代・安藤美冬「一発屋と定番の分かれ目」の画像1安藤美冬氏(左)と勝間和代氏(右)。
「やりたいことがないんだったら、やりたくないことから考えよう」
「もしマスメディアに出るのであれば、バラエティに振ってしまったほうがいいかも、と気づいたんです」

 経済評論家で「私塾『勝間塾』」を主宰する勝間和代氏と、今、企業からビジネスの依頼が引きも切らないノマドワーカー・安藤美冬氏。そんなおふたりが語り合った、対談企画第1〜2回目は、大きな反響を呼んだ。

 今回は対談企画第3回目として、「批判を受けたときに大切なこと」「一発屋と定番の分岐点」「定番に共通する秘密」などについて、語ってもらった。

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――おふたりとも、例えば『情熱大陸』(TBS系)の出演を経て知名度が急上昇したり、ブログやソーシャルメディアといったネットツールを上手に活用して言説を発信したりという共通項が多いように感じるのですが、「有名人になる」ことで苦労や面倒も増えてしまう面も、あるのではないでしょうか?

安藤美冬氏(以下、安藤) そのあたりのことは、私より勝間さんのほうがご苦労なさっていると思います。なので、私がそれを語るのはおこがましいかもしれませんが、やはり、批判やあらぬ誤解に触れるとヘコみますよね。私はいたって普通の人間なので。私はほんの2年前まで普通の会社員をしていて、今回のようにメディアに出させていただけるようになったのも、ここ半年足らずのことなんですね。もちろん、自分の活動や言葉が多くの人たちに届けられる現在の環境は、とても恵まれていると思いますし、感謝しています。ただ、これまで「自分をどう売り出していくか?」「どのようにソーシャルメディア上で発信していくか?」といった戦略を持ってやってきたのは事実ですが、あくまでそれはフリーランスとして独立後、「どう生計を立てていけばいいのか?」という課題を解決するための手段としてです。ソーシャルメディア上で積極的な発信を始めたのが約1年前ですので、これだけの短期間で、例えばテレビの討論番組からお声をかけていただいたり、『情熱大陸』に出演したりというのは、本当に晴天の霹靂というか、自分なんかがそんな機会を与えてもらっていいのかな、とも感じているんです。そして、今の本音を言えば、自分自身が思う自分の像──強いところもあれば弱いところもある「安藤美冬」という自己像と、良くも悪くも世間の人たちが捉えている「安藤美冬」像という、2つのイメージのギャップに悩んでいるというのが、正直なところです。

勝間和代氏(以下、勝間) キツいですか?

安藤 キツいです、とても。

勝間 ちょっとしたことまで、逐一話題になりますしね。

安藤 未熟で未完成なところも含めて、いつも正直にさらけ出して生きていきたいと思っているので。キツいし不安ではありますが、私を信頼してお仕事を任せてくれる方々に応える意味でも、堂々としていなきゃダメだよね、と。

リアルに知っている人の評判を大切に

勝間 私からひとつヒントというか、アドバイスさせていただくとしたら、安藤さんをリアルに知っている人が悪いことを言わない限り、大したことは起きない、ということです。以前、月刊誌「サイゾー」(小社刊)で私の特集をつくられたことがあるんですよ。その時に、ライターさんが「勝間ブームの裏側」みたいな切り口で、いろいろ調べられたんですね。で、彼が想定したのは、私を担当した編集者にインタビューして、悪口を聞き出すことだった。それを面白おかしく書き立てようとしたら、残念ながら編集者たちは誰も私の悪口を言わなかったんで、「記事になりませんでした」ってことまで書いてくださったんですよ(笑)。

安藤 素晴らしいですね。でも、そういったことは、最近、私も実感しています。臆測や誤解で、批判や不信感を向けてくる方も少なくないのですが、一方で私のことをよく知る身近な人たちからは「美冬のことは大好きだし、いつも応援しているよ」と、事あるごとに温かい言葉をかけてくださるので、本当にありがたいなと思っています。

勝間 まずは自分にとって身近な家族や友人がいて、お客様がいて、ファンがいて、そのほかの人がいて……と、だんだん関係性が遠くなってくるわけですが、近い人が自分のことを理解してくれているのであれば、それでいいのかなって。臆測や先入観で、ワイドショーで扱うゴシップネタのように批判や揶揄をしてくる人もいますが、そんな時に私は「おやまぁ、そうだったのかい」と頭の中で唱えることにしています(笑)。

安藤 いいですね、それ。「おまじない」みたいな(笑)。批判にさらされたり、臆測で語られたりするような、ネガティブな事柄があったとしても、それがポジティブに働く側面もあるなと痛感しているんです。これは別に強がっているわけではなく、本当にそう感じています。理由はふたつあって、ひとつは、身近な人たちがこれだけ自分を信頼してくれてるんだな、ということを実感できる点。もうひとつは、いろいろな方がアドバイスをしてくださって、成長するためのヒントやきっかけを得られる点です。そういったことが励みや糧になるっていうのは、本当にありがたいことだなぁ、と。逆に、ぜんぜん名前も知られていなくて、ひたすら孤軍奮闘していた去年あたりは、仕事もないし、これといってやりたいこともないしで、もっと内側にこもって悶々としていたんですよね。で、周りに対して見栄を張って、強がっていたんです。そういう心境の変化も含めて、周囲の方々に助けられてるなぁ……と、つくづく思いますね。

売り出すための仕掛け

――勝間さんにも、たとえば『情熱大陸』などで取り上げられ、耳目が集まるようになって、安藤さんが抱かれたような葛藤はあったのでしょうか?

勝間 私の場合、PR会社さんについていただいて、戦略的に売り出していったから、安藤さんのような自然発生的な部分がないぶん、当事者の感覚としては少し違うかもしれません。2008年の前半ごろ、ダイヤモンド社さんのスポンサードでPR会社に施策をお願いして、『情熱大陸』に出演したり、「週刊ダイヤモンド」や「AERA」で特集を組んでもらったり、という動きをほぼ同時期に仕掛けていきました。そのことについて「勝間の裏には電通がついている」とか、臆測や悪口を言う人もいましたけどね(苦笑)。

――想像を超えるというか…。

勝間 社会現象のようなレベルで有名になってしまう。要は、そのジャンルでトップに立ってしまうと、その人にあらゆることが集中してしまう傾向が強くなります。ひとたび耳目が集まり始めると、ひたすらそこに取材や講演などの依頼が殺到してしまうんですね。そして、誰がその枠に入るのか、というのは結局のところ偶然なんですよ。私も偶然そこに入ったし、安藤さんも偶然そこに入った。となると、その結果起こることは、なかなかコントロールしづらい面があります。もちろん、その枠に入れるよう、確率を上げていく取り組みは必要です。私も確率を上げる努力はしています。が、確率を上げる努力をした人が全員、枠に入れるかどうかはわからないことですから。

一発屋と定番の分水嶺

――要は「有名人になる」ことはコントロールできることではない、と。

勝間 ええ。コントロールできないから、行き着くとこまでやってみよう。とりあえず流れに乗って、やれることをやっていこう、というスタンスなんです。そして、ブームはどこかで必ず終息するものだから、終息した時にまた考えようと。ブームはたいてい2~3年で終息するんですね。人間の関心事にはサイクルがあるらしくて。で、その後、一発屋みたいな扱いになるのか、定番化するのか、という分水嶺が出てくる。わかりやすい例でいうと、私はコンビニの棚割りをイメージしているんです。たとえば、アミノ酸飲料とか大豆製品とか、トレンドが生じると関連商品、類似商品が一気に増えるじゃないですか。で、トレンドが落ち着いて、陳腐化すると、そうした商品はまた一気に姿を消していくわけですが、それでも10~20製品にひとつくらい、ちゃんと定番化するモノが出てきます。「有名人」というブームも、結局それと同じなのかな、といつも思ってるんです。

安藤 なるほど。わかりやすいですね。

勝間 ブームの間って、要はできるだけいろいろな人に知ってもらう過程であって、その中で興味を持ってくれた人の5~10パーセントでも買い続けてくれれば、それは定番として棚に残りますよ、と。そしてここが重要なのですが、なぜ定番化した人やモノが生き残っているかというと、コアなファンが飽きないように、ちゃんとイノベーションをしているからなんです。松任谷由実さんやサザンオールスターズといった方たちが典型ですけど、彼らは微妙に革新し続けている。同じようなことをしているようで、実はずっと新しいことをやっているんですよね。吉野家の牛丼も然りで、実は味がちょっとずつ変わってるんですよ。お客様が飽きないように、ちゃんとその時のトレンドなどを踏まえて味を変え続けてるんです。

――つまり、変わらないように見えるものでも、実は少しずつ変わっていると。

勝間 「定番」という響きに惑わされてしまいがちなのですが、定番って意外とイノベーションをしている。というか、だからこそ定番として残り続けているんです。一方、いわゆる一発屋で消えてしまう人やモノって、要は同じ芸しか持っていなくて、それが飽きられてしまったら終わってしまう、ということなのかな、と。だから、私がすごく安藤さんにお伝えしたいのは、いろいろ悩むところはあるだろうけど、最後に定番になるためにも、ブームのような喧噪はやはり必要ということ。ブームを、いろいろな人に知っていただくための機会と捉えれば、要はパブリシティーをしてもらっている状況なわけですから、とても大切な段階といえる。一生の中で、そんなにパブリシティーしていただける機会ってないですからね。

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●勝間和代(かつま・かずよ)
1968年東京生まれ。経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。少子化問題、若者の雇用問題、ワークライフバランス、ITを活用した個人の生産性向上、など、幅広い分野で発言をしており、ネットリテラシーの高い若年層を中心に高い支持を受けている。

●安藤美冬(あんどう・みふゆ)
株式会社spree代表取締役社長、自分をつくる学校学長。1980年生まれ、東京育ち。
慶応義塾大学、集英社を経て11年1月独立。ソーシャルメディアでの発信とセルフブランディングを駆使し、複数の仕事、複数の肩書で仕事をする独自のノマドワークスタイルは、「一切営業することなく仕事をするフリーランスの女性」としてジャーナリスト佐々木俊尚さんに紹介されるほか、『情熱大陸』『ニッポンのジレンマ』「朝日新聞」などのメディアでも多数取り上げられる。書籍の企画、イベントプロデュース、野村不動産、リクルート、東京ガスなど企業が参画する「ポスト団塊ジュニアプロジェクト」のアドバイザリー業務、自らが学長を務めるセルフブランディングをテーマとした「自分をつくる学校」の運営など、多岐にわたる仕事を手がけ、新しいワーク&ライフスタイルのオピニオンリーダーとしての活躍が期待されている。

BusinessJournal編集部

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