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山田厚史「日経新聞の“正しい”読み方 第1回」

広告、消したい過去…日経が野村インサイダーに“甘い”ワケ

文=山田厚史/ジャーナリスト 元全国紙経済部記者
広告、消したい過去…日経が野村インサイダーに“甘い”ワケの画像1一連のインサイダー疑惑報道では、日経は他の
一般紙より突っ込みが弱いという。
(5月30日付朝日新聞より)

「日経新聞は一応とっているけど、結局テレビ欄しか読まない……」というビジネスマンは多いはず。そんな、日々仕事にプライベートに忙しく、ゆっくり日経を読む時間のないビジネスマンのために、元全国紙経済部記者で、現在は「AERA」「ダイヤモンドオンライン」などに寄稿するジャーナリスト・山田厚史氏が、最近の日経記事の中から気になる記事をピックアップし、その内容と報道の“カラクリ”を解説します。

 増資インサイダーが、証券界を揺るがしている。

 野村証券を筆頭に、続々と明るみに出る不正。証券会社の営業マンが、投資ファンドなどの大口顧客に増資情報を漏らし、見返りに注文をもらっていたというのだ。証券業界に断然強いのは日経新聞だが、その書きっぷりは、いかにも及び腰だ。

日経社員がインサイダーで大儲け?

 そういえば、過去、増資情報を悪用して株で儲けていた日経社員がいた。広告局で働くこの男は、社内端末を操作し、法定公告として出稿された「増資のお知らせ」を盗み見して約3000万円も荒稼ぎしていたのだ。

 企業が増資を行うと、「株数増加=ひと株当たりの利益低下」と市場は反応し、発表直後はその企業の株価が下がる。よって、公表される前に情報を入手して株を「空売り」し、下がったところで買い戻せば儲かる。日経社員という立場を悪用したこの男は、判決で罰金600万円に加え、1億1674万円という当時史上最高の追徴金を課せられた。

 日頃からインサイダー情報が身近にある日経。「ほかにもやっている社員がいるのでは?」と疑われたが、その時は「個人的犯行」ということで一件落着だった。

 今回の野村証券の場合、個人的犯行で済みそうにない。第三者機関による内部調査で「収益第一主義のもたらした結果」と指摘され、営業がインサイダー情報を流して商売の種にする「組織ぐるみ」の行動であった疑いが持たれている。そうした内容は、他の大手紙は報じているが、なぜか証券業界に強い日経には、野村の内実に触れるような迫力ある記事が見当たらない。

他の一般紙に抜かれまくり

「おや?」と思ったのが、7月3日付日経夕刊。「金融庁、証券12社に点検命令 増資インサイダー問題で」という記事が載った。他紙にない抜きネタ。普通なら1面トップを張ってもおかしくない記事だ。それが3面にたった4段という地味な扱いだった。しかも、当局の方針を淡々と書いてあるだけ。

 他紙は翌日、大きく追っかけた。「異例の調査命令」「主幹事外し」(朝日新聞)といった見出しで、当局の強い姿勢や、野村のビジネスに支障が出ていることなど、事件の広がりを報じている。

山田厚史/ジャーナリスト 元全国紙経済部記者

山田厚史/ジャーナリスト 元全国紙経済部記者

1971年大手新聞社入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送テレビ番組で、コメンテーターなども務める。

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