お目付け役。「Thinkstock」より
会社法の見直しは、オリンパスの巨額粉飾決算や大王製紙の前会長による特別背任で損なわれた市場の信頼を回復するのが狙いだった。大王製紙の事件では、カジノで負けた穴埋めをするために子会社から役員会の承認を得ずに多額の借り入れを行っていた。経営の監視機能を強化するための重要な柱になったのが、取締役会に「社外の目」である社外取締役を入れることだった。
11年12月にまとめられた会社法改正の中間報告は、資本金5億円以上の上場企業に1人以上の社外取締役の選任を義務づける内容だった。
選任義務化に強い拒否反応を示したのが経済界だ。日本経団連が真っ向から反対した。「一律導入は合理的ではない」と声高に主張した。
社外取締役の選任義務化に反対する経団連のこの動きは、外部から経営について批判されたくないという本音がミエミエだった。日本の大企業は生え抜き社員が社内での競争に勝って出世していき、最終ゴールとして社長になるといった双六のような構造になっている。企業が株主のものであり、経営者は“雇われママ”であることを、どうしても忘れがちになる。自分たちの地位を守ることには熱心だが、株主は常に軽視されてきた。社外取締役の選任義務化に猛反発したのは、その心根が露骨に出ただけなのだ。
社外取締役の選任義務化に強い拒否反応を示していたのが日本経済団体連合会(米倉弘昌会長・住友化学会長)と全国銀行協会(佐藤康博会長・みずほフィナンシャルグループ社長)だった。全銀協は「社外取締役の選任は、すべての企業に適合的なものであるとは限らない。社外取締役を法で一律に義務付けることは、かえって企業が自社に最適なガバナンス態勢を構築する際の妨げになるおそれがある」と主張した。さらに全銀協は「一律に社外取締役の選任を義務付けることは、本来それを必要としない銀行・企業にとっては、経営・管理コストのみが増大するという弊害が生じる」と強硬な反対論を展開してきた。