「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(8月第1週)

ユニクロが就職したい会社ランキングに入ってこないワケ

(右)「週刊ダイヤモンド 8/4号」
(左)「週刊東洋経済 8/4号」
「週刊東洋経済 8/4号」の大特集は『読書の技法 不安な時代を生き抜く 厳選160冊』。毎年夏の恒例である「ベスト経済書・政治書」とともに、「日本経済」「世界経済・金融」「家族・無縁社会」「現代人の『死に方』」などといった7つの分野で専門家による読書ガイドを掲載している。学者やエコノミストによるアンケートの結果、「ベスト経済書・政治書」の経済書1位は『「失われた20年」と日本経済』(深尾京司著、日本経済新聞出版社刊)、政治書1位には『日本近代史』(坂野潤治著、ちくま新書)となっている。

 第二特集は『2013年卒 就活&採用 ブランドランキング300』。日本経済低迷の中で展開された今年の就活&採用活動。ふたを開けてみると、サービス、流通、金融、商社を中心に、新卒採用の求人意欲は旺盛で、就職内定率もアップした模様だという。

 2013年卒の採用は、これまでとは2点の違いがあった。1つは前年は10月1日だった就職情報の解禁日が12月1日となり、2カ月ほど短く短期集中となったこと。もう1つは昨年3月に経団連加盟企業が発表した新倫理憲章によるインターンシップの正常化だ。この新倫理憲章によれば、インターンシップとは、就業体験であり、所要日数は5日間以上で、採用選考とは関係がないものとされた。

 まず、短期集中になったことに対し、大学側の対応は、12月までに独自の就職ガイダンスや卒業生の経営者、若手社員などを呼んだ就職イベントに取り組んだ大学と、学内説明会さえも企画しなかった大学の2つに分かれた。結果として、就職イベントに取り組んだ旧帝大、旧商大、有名私大は圧倒的な結果を残したという。来年以降の各大学の課題になりそうだ。

 また、2点目のインターンシップの正常化によって、短期のインターンシップが減少した。今後ますます採用直結型のインターンシップとなっていくのではないかと見られる。たとえば、毎年ゴールデンウイーク明けの新卒退職者が多いことが悩みだったユニクロは新卒採用過程でインターンシップを必須とした2011年卒、つまり今年の入社組から新卒退職者が減ったのだという。

 コラム記事『これがユニクロ流インターンシップだ 通年採用、1年生で内々定も』によれば、ユニクロのインターンシップは、「(店舗内の仕事は)何でもナンバーワンでなければ務まらない」という店長業務を体験する店舗と、経営幹部との対話やグループ討議を軸にした本部とで、計4日間行われる。仕事意識を持ち、本気で取り組んでもらえるように、4万円近い給料も支払われている。このインターンシップの効果は大きく、終了後選考を辞退する学生も多いが、想像以上に店長の業務が奥深いと評価する、相思相愛の学生も残りやすいという。

『2013年卒 就職したい会社ベスト300』では、1位が食品事業と医薬品事業が共同で採用活動を行っている明治グループ。2位は採用ホームページ、会社案内、セミナーなどへの評価が高い三菱東京UFJ銀行。3位は丸紅、4位は伊藤忠商事と商社が占めている。

 ちなみに、ライバル誌「週刊ダイヤモンド」は前号7/28号の第二特集で『氷河期を脱した2013年新卒就職戦線』という特集を組んでいた。同様に『2012年 学生が選んだ第6回新卒採用力ランキング』が掲載されているが、その第1位は三菱東京UFJ銀行、2位は日本生命保険、3位は東京海上日動火災保険となっている。

 こうしたランキングを見るたびに思うのは、メディアで「世界を狙うカリスマ経営者」として評価されるソフトバンク・孫、マクドナルド・原田、ユニクロ・柳井といった面々の企業が上位に入ってこないことだ。『2013年卒 就職したい会社ベスト300』ではソフトバンク・グループが第224位に入っているのみで、マクドナルド、ユニクロ(ファーストリテイリング)は圏外になっている。

 たしかに「就職したい」ランキングは大学生の安定を求める憧れ企業ランキングにすぎないともいえるが、それにしても、マクドナルドやユニクロといった企業の、ワンマン、業績重視のコストカットで過酷……といった社会的な評価が表れているのではないだろうか。これでは各社ともに優秀な人材が入ってこずに、ますますワンマン体制が強化されることになってしまいかねない。

夏休みの家族旅行に使えそうなヒマネタ集

「週刊ダイヤモンド 8/4号」の大特集は『JR VS 私鉄 王者JRを猛追する私鉄』という鉄道特集だ。東京急行電鉄の「渋谷ヒカリエ」オープン、東武鉄道の「東京スカイツリー」開業、西武鉄道創業100年と今年は大手私鉄に勢いがある年だ。

 7月24日には、東急東横線と東京地下鉄(メトロ)副都心線との相互直通運転が来年3月16日から開始されることが正式にアナウンスされたばかりだ(現在の東横線渋谷駅は、3月15日の営業を最後に廃止される)。2019年には東横線と相模鉄道の相互直通運転、これに対し、JR東日本も2014年度中には東北縦貫線を完成させ、それまで上野駅止まりだった高崎線・常磐線が東京駅まで乗り入れられることになるなど、これまでのターミナル駅がガラリと変わっていくのだ。

 なぜか経済誌は鉄道ネタが大好きで、各誌毎年1回は特集を組んでいる。とくにライバル誌東洋経済は、2011年3/5号『鉄道最前線~JR・私鉄から車両工場まで 80ページ総力特集』  同4/16号『徹底検証 鉄道被災~動き出す復興への道筋』、2012年2/25号『鉄道再起動~新幹線特許からホームドア設置まで鉄道大特集』と年に2冊ペースで出していたほどだ。しかし、東洋経済は12年2/25号の鉄道特集が店頭に並んでいる2月18日に編集長が京浜東北線内の痴漢で逮捕されるという不祥事があり(陰謀説もあったようだが、その後の東洋経済側の反応を見る限り、単なる痴漢に過ぎなかったようだ)、以来、鉄道特集は組まれていなかった。

 今回の経済誌的な問題意識は「新幹線延伸とリニア新設に見る巨額投資決定の裏事情」だ。今年は新幹線イヤー。山陽新幹線が開業40周年、東北新幹線と上越新幹線が30周年、山形新幹線20周年、秋田新幹線が15周年なのだ。

 今年6月末、税金の無駄づかいといわれながらも整備新幹線3区間の着工が決まった。総投資額は3兆円。民自公の大連立ともいうべき政治的妥協の下で、地元に便益をもたらしたい地方と政治家、予算を獲得・維持したい国土交通省などの思惑が入り乱れ、ドサクサ的に決定した。

 整備新幹線とは、国が建設して線路をJRに貸し出すスキームであり、そもそもの財源は税金なのにもかかわらず、国民不在の決定なのだ。さらに、国交省の整備新幹線の試算はズサンで、日本の人口がピークアウトしている現実を見据えたものとはなっていないのだ。そもそも整備新幹線の基本計画が決まったのは1972年のこと。40年を経た整備新幹線計画じたいを見直すべきではないかと指摘している。

 いっぽう、税金投入なく、自腹で計画が進むのが、総事業費9兆円ともされるJR東海が進めるリニア中央新幹線だ。開業すれば現行で1時間36分の東京―名古屋は40分。現行で2時間25分の東京―大阪は1時間7分で結ばれるのだ。税金が投入されれば政局に左右されて建設が遅れたり、建設業者を指定されるなど政治に巻き込まれかねない。さらに、税金が投入されると整備新幹線のスキームで計画することになるが、このスキームでは、収益が多いと、国庫への納付額が増える仕組みになっており、儲かる路線を運行してもJR東海には利益が残らなくなってしまうのだ。

 このリニア中央新幹線は全国の人口の6割が集中するという肥沃なマーケットを走り、人口減少の影響をいちばん受けにくい。企業としてはドル箱路線は自ら開発して最大のリターンを得ようと考えることになる。ただし、リニア中央新幹線の全線開通予定は2045年とまだ先の話だ。

 今回のダイヤモンドの特集は『JR・私鉄が誇る車両・鉄道技術』や『知られざる「鉄道人」の裏側 ローカル線を再生せよ! 6人の公募社長奮闘記』『犯罪から乗客の安全を守る!密着警視庁鉄道警察隊』『鉄道が好きになる魅惑の観光ガイド』といった夏休みの家族旅行で使えそうなヒマネタばかり……。編集部が夏休みに入ってしまったのだろうか。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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