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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第四回

銀行の強引勧誘で4千万円損害 被害者が語るデリバティブの罠

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 なお、このとき、この営業マンは、後述のように途中で解約すると莫大な損失が出る仕組みにもかかわらず、そのことには一切触れなかった。

 その後、水野氏は、諸事情により、会社をたたんで、自身が所有するビルのテナント収入で老後を送ろうとした。それが08年の夏頃だった。この時、北陸銀の支店長がきて、「水野さん、会社を整理するには、デリバティブの解約も必要です」と言い「解約には1千数百万円以上かかります」と言った。水野氏は「ええ? そんなにかかるの」と驚きつつも、まだ少し利益が出ていたので、もう一か月置いておくことにした。

 その直後の9月15日、リーマンショックが勃発して、どんどん円高が進んだ。驚いてデリバティブを解約しようとしたところ、「円高になったので解約金は4千万円以上かかる」と言われた。「冗談じゃない。これなら持ち続けた方がまだいい。もしかしたら円安に振れるかもしれない」と考えて、辞める予定だった仕事も、デリバティブの支払いのために辞めることができず、個人事業主に近い状態で仕事を続けながら、3カ月に一度のデリバティブの損失を、コツコツ返済していった。こうして契約終了の11年9月までのデリバティブの損失額は、実に約4千万円に上った。

 この損失により池袋のビルも売るハメになった。ビルの売却価格は、リーマンショックの影響がたたり、3分の1ほど目減りした。こうして北陸銀により、思い描いた人生設計は大きく狂わされた。

 水野氏は北陸銀に対しては「これだけ長い付き合いなのに、銀行が扱うべきではないデリバティブ商品を勧めて、損ばかりかけさせて、担当の営業マンや支店長、副支店長たちは全員さっさと転勤させる」と叱責したが、新しい担当者は「ご迷惑をおかけしました」と表面上、謝罪するだけだという。

「特に金がなくなると、銀行は薄情ですよ。晴れていれば傘を貸して、雨が降ると傘を取るようなことをする。銀行の口車に乗ってはいけないですね」と水野氏は述懐する。

 その後水野氏は、北陸銀に対して、損害賠償請求の裁判を起こすことを決めた。インターネットで調べたデリバティブ被害に詳しい岡林俊夫弁護士(東京都新宿区)に相談し、12年3月14日、北陸銀に対して損害賠償など計4210万4150円の支払いを求める訴訟を東京地裁に提起した。

 岡林俊夫弁護士は「そもそも円とドルの金利差により、将来のドルは、円高のレートで購入できるのが常識です。銀行はそのことを知っています。その上、水野さんの場合、『ノックアウト条項』といって、円安が進み、水野さんの利益が出ても、1ドル126円の円安に達すると、契約解除になるという、銀行側のリスクヘッジはなされる一方で、『レシオ』といって、105円以上の円高になると、水野さんの損失は倍になる契約を結ばされていました」と、説明する。

 さらに驚いたことに、「北陸銀は、水野さんと契約時点の『時価評価』を出しています。こちらの公認会計士が調べたところ、時価評価はマイナス約1700万円。ブルームバーグのソフトを使って計算したところマイナス1500万円程度。こちらで入手した北陸銀の内部資料によると、北陸銀はマイナス約1300万円と評価していました。つまり、契約してハンコを押した瞬間、水野さんにとっては1,300~1,700万円のマイナスで、北陸銀にとってはそれだけの収益になっていました」(岡林氏)という。

BusinessJournal編集部

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