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健康・介護保険は使うな、介護職員の待遇改善なんてしないetc.

介護職員の年収は4倍に!?「日本再生戦略」のウソ

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日本再生戦略は、小役人の小細工の塊なのか?

 介護職員の年収900万円という驚きの計算結果に、「野田内閣の日本再生戦略の現実離れ、ここに極まれり」と批判するのはたやすい。だが、そこにはちゃんと伏線がある。

 民主党は政権交代を果たした09年の総選挙で「介護職員の月額4万円賃上げ」をマニフェストに明記していたが、翌年の参議院選挙のマニフェストでは消えていた。

 厚生労働省は09年10月から職員1人当たり1万5000円の「介護職員処遇改善交付金」を支給し、今年度の介護報酬改定で介護報酬の中に組み込まれて「介護職員処遇改善加算」になった。しかし、これはもともとは麻生自公連立内閣の置きみやげであり、4万円の賃上げにはほど遠い金額だ。

 しかも厚生労働省は、「財源の制約も考慮し処遇改善施策の取扱いを検討すべき」と言っている。つまり政府に介護職員の待遇改善に回すカネはないと言うのである。

 だが、新成長戦略には「医療・介護・健康関連サービスは成長牽引産業」「勤務環境や処遇の改善による勤務医や医療・介護従事者の確保」とはっきり書いてある。

 このままではマズイと、“小役人”なら思うだろう。

大震災を利用したすり替え

 ちょうどいいぐあいに、震災を受けて新成長戦略を見直し、日本再生戦略をつくるという話が持ち上がった。

 「健康大国戦略は、ライフ成長戦略と言い換えよう」
 「医療・介護と連携した健康関連サービス産業から、『医療・介護と連携した』を落として正体不明にしよう」

 言葉のすり替えは小役人の得意技だ。しかし、現実離れした「50兆円・284万人」や「25兆円・80万人」の大風呂敷は、予算獲得の数字的な根拠なので変えない。小役人は予算を減らされることを一番恐れる。事業仕分けなど、小役人にとっては心臓が止まりそうな衝撃のイベントだ。

 そして、日本再生戦略のライフ成長戦略の概略では、健康関連サービスに言及せず、数字だけまぎれ込ませ、介護職員の勤務環境や処遇の改善は口が裂けても言わない。あとはバターでも塗るように浮世離れしたハイテクや海外進出の話でおおって隠すという、いかにも“小役人”がやりそうな姑息な小細工で、マズイ部分の封印に成功したといえよう。

 日本再生戦略も、その前身の新成長戦略も、「グランドデザイン」などと称する各省庁の構想を寄せ集めてつくったものだが、実態がこんな小役人の小細工の塊になっていいのだろうか?

 日本を再生する前に、小役人の「悪しき習性」を、まず再生すべきではないだろうか?
(文=寺尾淳/フィナンシャル・プランナー)

BusinessJournal編集部

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