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急速にしぼむ地熱発電に代わり急浮上で、問い合わせ殺到

温泉や工場の排熱で発電!? 三菱も参入狙うバイナリー発電

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 大手電力会社の電力供給不安や、問答無用と言わんばかりの電気代値上げに対する自衛策として、企業などの間で電力自給意識が強まっているのも一因だ。

温泉郷は地熱バイナリーで電力自給

 地熱バイナリー発電に関心が高まったのは、発電の利便性にある。電源ともいえる低温熱水資源(53〜150℃)は浅い地層にあるので、地熱発電と異なり探査が容易で、平野部で発電できる場所が多いなど、発電所建設に関しても障害は極めて低い。要するに探査から発電開始までの期間が短く(1〜2年)、それだけ初期投資額が少なくて済む。

 ちなみに、わが国には全国約2万8000カ所(未利用含む)の温泉源がある。地熱バイナリー発電なら、この温泉源の排熱や余熱をそのまま利用できるので、探査・掘削経費が不要になる。しかも温度と湧出量のデータさえあれば発電能力の試算ができるので、事業化も進めやすい。100℃以上の温泉を湧出する泉源があれば、地域レベルで電力自給できる温泉郷が相当な数に上るものと推測されている。

 こうした情報と電力供給不安を背景に、地熱バイナリー発電導入の検討が全国各地の温泉組合や大手温泉旅館の間で進んでいる。

導入第一号は、温泉旅館

 冒頭の神戸製鋼所マイクロバイナリーの導入第1号は、大分県由布市の大手温泉旅館だった。福島県福島市の土湯温泉にある温泉組合では、14年に500kW級の地熱バイナリー発電所を稼働させる計画を進めており、その後は発電能力を1000kW級に拡大、温泉郷全体の電力自給を目指している。

 バイナリー発電装置供給側の動きも活発化している。神戸製鋼所のほかに、川崎重工が本格的な受注活動を開始している。このほか、JFEエンジニアリング、三菱重工、第一実業なども本格参入の構えを見せており、全国各地のバイナリー発電導入プロジェクトに積極的に参加している。

 バイナリー発電は毎日運転開始と停止を繰り返すDSS運転(Daily Start and Stop)も容易にできるため、工場などの操業時間に合わせた発電もできる。このため、現在は利用方法のない一般工場、清掃工場、地下鉄などの排熱も、今後はバイナリー発電の熱源として利用が急速に拡大しそうな気配を見せている。

 バイナリー発電がすでに普及している欧州と比べると、日本のバイナリー発電は「今頃?」の感が否めない。

未利用熱エネルギーに関する国の施策が、下水や河川水の「温度差発電」など技術的に実現が困難な案件に偏り、バイナリー発電のような実現が容易な案件にはほとんど目を向けなかったせいもある。

 関係者の間では、再生エネの中で最も地域分散型電源に適しているとの見方も多い。
 
 地熱発電から地熱バイナリー発電へと、まるで「瓢箪から駒」みたいな話だが、着実で手頃な電源として需要が本格化するのは間違いないと思われる。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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