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「繰越欠損を抱えて法人税を払わない」カラクリを解説

あおぞら銀「新銀行東京買収」で黒字の“青空”は戻るか?

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 だが、この計画には重大な欠陥がある。現在、支払っていない法人税の納付再開が計画に組み込まれていないのだ。過去の大赤字で、課税所得と相殺できる繰越欠損金が、12年3月期末で815億円あるので、法人税を支払わなくていい。しかし、黒字決算が続き、繰越欠損が消えれば、当然、法人税を払わねばならない。そうすると、社外流出額が利益額を上回り、公的資金の分割返済計画の枠組みが崩れてしまう恐れがあるのだ。

 さて、どうするのか。

 あおぞら銀に新銀行東京の買収観測が持ち上がっているのは、同行のもろもろの矛盾を一気に解決しようというウルトラCの側面があるからだ。金融当局には、なかなかの知恵者がいるようだ。「繰越欠損金を抱えている銀行を買収する」ことで、法人税を払わないようにしようという、究極の裏技なのである。

 新銀行東京は05年4月、石原慎太郎・東京都知事の旗振りで、資金繰りに悩む中小企業の支援を目的に開業し、「石原銀行」の異名を持つ。しかし、運営わずか3年で1000億円近い累積赤字を抱えて事実上の破綻状態に陥った。都が400億円の優先株を引き受けて、事業再建が図られた。現在の資本金は200億円。東京都が84.22%(議決権割合)の株式を保有しており、都の事業である。

 しかし、公的資金(『都民の血税』だ)が導入されても累積赤字の解消にはいたらず、12年3月期末で依然として71億円の繰越損失を抱えている。どうにか単年度決算で黒字化したとはいえ、13年3月期の業績見通しは、経常利益がたったの5億円、当期純利益はわずか2億円の見込みだ。経済情勢ですぐに赤字に逆戻りする。短期間で繰越欠損を消すことは絶望的である。

「都にはお荷物以外の何ものでもない。石原都知事が退任後は真っ先に整理対象になるだろう。あおぞら銀行が買収してくれるのであれば、熨斗(のし)をつけて差し出したいのではないか」(有力金融筋)

 あおぞら銀による新銀行東京の買収が実現すれば、繰越欠損が欲しいがためだけの買収という、前代未聞のM&Aとなる。

 同行の前身である旧日債銀は98年に経営破綻。公的資金が注入され、一時、国有化された。その後、オリックスやソフトバンク、東京海上火災保険の企業連合による買収を経て、03年にサーベラスが筆頭株主になっている。

 あおぞら銀の初代社長(頭取とはいわず、新しさを強調するために社長の呼称にした)、本間忠世氏(60)が00年9月20日朝、大阪のホテル、阪急インタナショナルで自殺した。本間氏は日銀出身でエリート中のエリートだった。

 かつて政治家の貯金箱といわれた旧日債銀は、トップ2人の逮捕→国有化(第2号、第1号は日本長期信用銀行)→身売りと、さまざまな変遷をたどり、新銀行(あおぞら)の初代社長の就任直後の自殺に見舞われた。それ以来、あおぞら銀に青空はまだ戻っていない。

 ところでソフトバンクの孫正義社長は、旧日債銀株式の買い取りに493億円を投下したが、2年半後に米サーベラスに1000億円で売却した。さすが孫正義である。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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