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ダマされないための「儲けのカラクリ」 第12回

もし“マジメ人間”桑田佳祐がサラリーマンだったら成功するか?

文=坂口孝則
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 曲づくりだけではなく、レコーディングもロックのラフなイメージと異なる。たとえば90年にTBSで放送された『すばらしき仲間 2』では名曲「真夏の果実」のボーカルを1秒単位で録り直す姿が、幼い私に強烈なインパクトを与えた。本人以外、誰も違いがわからないであろう微差を、納得するまで解消しようとする氏。それは、アーティストというよりも、町工場の職人そのものだった。

 しかも、それはレコーディング後まで続く。飲みに行ったバーで自分の曲が流れると、「反省ばかりしてしまう」。どこまでも、職人気質なのだった。

 「世の中には、ギターのコードをジャーンと鳴らして、一筆書きのように等身大の自分を描き、それで自己表現を見事にしてしまう天才もいる。僕には絶対に出来ないことだ」(『やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん』より)

●成功するアーティストとビジネスマンの共通点

 氏を見ていると、一般的なアーティスト像と異なる。学習し、試行錯誤し、妥協せず、なにより勤勉だ。

「よく働きますよ。半端じゃないですよ。体力も凄い。集中力も凄い。頭も体も、働くことを嫌がらないしね。やっぱり、人の倍働いているから、ああいうふうになれるんじゃないかなっていうのが、まずありますね」(『クワタとユーミン』<サンマーク出版>より友人のインタビュー引用)

 アーティストはどちらかといえば、我が道をゆくイメージがある。しかし、それにたいして、桑田佳祐さんはつねに判断の基準はファンであるとしてきた。しかも、ロックのひとには珍しく、売れたいという気持ちを隠さない。

「もっと売れるもの作んなきゃ、だめだ」「売れなきゃだめだ」(同引用)
「ヒット曲を出します! もういちど『ベストテン』に入ります! 入らせてください!」(『ロックの子』講談社より)

 ビジネス用語で、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という用語がある。前者は、市場でお客のニーズに合致した商品をつくること。そして、後者はむしろ新商品を市場に提案すること。前者はお客優先で、後者は作り手優先だ。この意味で、桑田佳祐さんはずっと前者であり続けた。過剰なサービス精神と、商品のために努力を惜しまない姿勢、そしてヒットを求める執念が、現在の氏を創りあげた。

 かつて桑田佳祐さんは、歌手でなければ、自分はそれなりにサラリーマンとして成功していたのではないか、と語ったことがある。なるほど、たしかにその特性は備えているようだ。そしてアーティストでも、ビジネスマンでも、演じる力が必要だ。本心や気持ちとは別に、舞台や職場で演じる能力。桑田佳祐さんは、この意味でもプロフェッショナルであり続けた。

坂口孝則

坂口孝則

関西の某国立大学卒業後、携帯電話メーカーへ。購買部に配属される。バイヤーとして担当したのは200社以上。株式会社アジルアソシエイツ取締役、未来調達研究所取締役(現職)。バイヤー同士の情報交換ができる場、購買ネットワーク会発起人。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。メルマガ「世界一のバイヤーになってみろ!!」代表執筆者。コスト削減のコンサルタント、調達業務研究家。物流コンサルタント。
未来調達研究所株式会社

Twitter:@earthcream

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