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「年俸制だから残業代は支払わなくてもいい」にダマされていませんか?

サービス残業の元凶!年俸制・裁量労働制に残業代は込みのウソ

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 社員にしてみれば、「こんな給料ではやっていけない」よりも「このままでは身体をこわす」ほうが悩みはより深刻で、退職の動機としてはより強いはずだ。もし身体をこわしてしまったら転職もままならなくなる。「給料は安くても我慢するが、サービス残業は勘弁してくれ」と思っている人は、その逆の数十倍は存在するのではないだろうか。

「ウソつきは泥棒の始まり」ということわざがあるが、「サービス残業はブラック企業の始まり」と、あえて言わせてもらおう。

●年俸制、裁量労働制、みなし労働時間制はサービス残業を正当化しない

 世の中にブラック企業がもっと増殖してほしいと思っている人は、おそらく誰もいないだろう。親族や知人やその子弟が間違ってそんな会社に入り、苦しんだ末にやめて社会人生活の貴重な時間をムダにする姿など見たくないはずだ。サービス残業をさせる会社はブラック企業予備軍だと考えると、まずはサービス残業から退治して悪の根源を元から絶たなければならない。

 残業代の支払いは法律で定められた会社の義務であり、社員の権利でもある。法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超える時間外や休日に労働をさせたら、割増賃金を「支払わなければならない」と、労働基準法37条は会社に義務づけている。深夜労働をさせたら、さらに上積みになる。その割増率は政令で、時間外労働は25%以上、休日労働は35%以上、深夜労働は25%以上と決められている。2010年に時間外労働が月60時間を超えた場合、超えた分の時間外の割増率を50%以上とする規定が追加されたことを、どれぐらいの数の人がご存知だろうか。

 ところが、労働基準法よりも後にできた3つの制度について「この規定の例外になる」と思い込んでいる人が経営者にも社員にもたくさんいて、誤解とサービス残業を生んでいる。それは「年俸制」「裁量労働制」「みなし労働時間制」である。

●年俸制だと、残業代は支払われないのか?

 年俸制を導入しても、法定労働時間を超えたら残業代を支払わなければならない。労働基準法の規定はそのまま適用される。会社が支払わなかったらそれはサービス残業で、法律に違反する。罰則は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金だ。

 会社が「年俸制だから残業代は支払わなくてもいい」と言い訳するのはおそらく、経営者の会合か何かで「残業代なんか一銭も払っていませんよ」といった年俸制導入企業の話を鵜呑みにしたからだろう。

 だが、そこには大事なことが抜け落ちている。残業代を一銭も支払わないようにするには、会社とその社員の間で「月間○時間の時間外手当(年間○時間の時間外手当)は年俸額に含まれる」という明確な合意を取り交わして文書にしておき、なおかつ実際の時間外労働がその○時間以内に収まった場合に限られる。それを超えたら、超えた分の残業代は払わなければならない。

 ましてや「年俸制・年何百万円支給」というだけの約束なら、残業代は年俸に含まれず、法定労働時間を超えた分は残業代を全額、年俸分とは別に払わなければならない。もし、まだ年俸制ではないのに「もうすぐ年俸制にするから」と言ってサービス残業をさせていたら、よりいっそう悪質だ。後で残業代を年俸に含めると合意しても、それをすでに支払い済みの賃金にさかのぼって適用することはできない。
(文=寺尾淳/フィナンシャルプランナー)

※後編へ続く

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