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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.5」

これだけ読めばわかる!大統領オバマの“生まれ方”

文=塩野誠
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 一方でロムニー氏は投資ファンド経営者というバックグラウンドもあり、政府の介入を最小限に抑え、民間と市場の力によって経済成長を実現させる「小さな政府」を唱え、「大きな政府」は財政赤字を悪化させるものと批判し、今回の選挙に挑みました。例えば医療保険改革において、日本ではごく当たり前の国民皆保険制度も米国では大きな論争を呼び、医療保険改革法が憲法に違反するか否かが連邦最高裁判所で争われました。国民皆保険制度は社会主義的であり、「大きな政府」志向であるという批判にさらされたのです。今回の選挙は、オバマの「大きな政府」対ロムニーの「小さな政府」の戦いとも言われました。

 私は前回の08年の選挙の際に、オバマ氏の選挙演説を聞きにいったことがありましたが、演説会場でオバマ氏の登場を今か今かと待ち受ける人々は、白人、アフリカ系、アジア系と多様性に富んだ集団でした。一緒に演説を聞きにいった白人の女子学生も、「こんなに多様性がある聴衆が集まることは珍しい」と言っていました。

 確かに、米国では人種や経済的階層が溶け合っているというより、バラバラな集団として一つの国に存在していると言ったほうが正しいでしょう。オバマ氏の支持者には、人種や貧富の差によって分断された国が、オバマ氏の登場で、もしかしたら一つになっていけるかもしれないという淡い期待があったように思います。また、近くにいたアフリカ系の夫婦は「こんな保険制度じゃ、もう生きていけない」と、見ず知らずの日本人の私に訴えていました。こうした人々は喜んで民主党の期日前投票のバスに乗せられて投票所に向かったことでしょう。

 アフリカ系初の大統領となったオバマ氏でしたが、その後、国民からの見え方としての公平さを担保するためか、大統領就任時は熱狂的な支持をした黒人層に対して、その後の政策的には特に優遇はなかったと言われてきました。

●ロックのライブのような選挙演説会場

 ところで、日本の選挙では想像しにくいことですが、演説会場はさながらロックのライブ会場のようでした。巨大なスピーカーから大音量でロックが鳴り響き、前説の担当者が聴衆たちをドッカーンと煽って盛り上げ、聴衆が暖まり切ったところで、「Yes, We can」の大号令の中、オバマ氏が登場したのでした。

 あれから4年の月日がたち、オバマ大統領は再選されました。米国民は「変革」を唱えて登場した大統領に、再び望みを託した形になりました。2期目となるオバマ大統領の前には、財政再建問題や失業問題といった国内問題が依然として待ち受けています。一方で大統領は外交の最高責任者、軍の最高司令官でもあります。オバマ大統領は選挙中にヨーロッパ経済やアジアの軍事戦略といった国外問題を網羅的に取り上げることは少なかったわけですが、従来から国外問題に関心の薄い米国中間層にとって駐留米軍問題以外はさほど気にならなかったでしょう。日本にとっては、米国の従来の政策である金融緩和(QE3)が継続される公算が高くなったことから、円高基調は維持される可能性が高いと考えられます。

塩野誠

塩野誠

経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター

ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。

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