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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第7回

大手新聞社、広告出稿の見返りにサラ金批判を封じる密約?


 
 村尾が脇にある籠からビール瓶を取り、松野に注ごうとした。
 
「いや、私がやります」

 隣の小山が村尾の取り上げたビール瓶に手を伸ばし、松野、村尾、北川の順にグラスに注いだ。瓶を受け取ろうとする北川を制して、自分のグラスにもビールを注いだ。
 
「なんだか、よくわかりませんが、お近づきの印に乾杯しましょう」
 
 小山がそう言って、杯を上げた。
 
「お待たせしました」
 
 老女将がビール2本と焼酎のボトルを載せたお盆を小山の脇に置き、後から来た2人のつき出しと前菜を運んだ。部屋を出ると、今度はお造りの皿と煮物の小鉢を持ってきた。
 
「この後は寄せ鍋ですが、どうします? すぐに用意したほうがよければ、熱燗とお湯割りのお湯と一緒にお持ちしますけど…」
「そうだな。そうしてもらうか」

 老女将が部屋を出て格子戸が閉まる音を聞いて、今度は北川がビール瓶を取った。

「さあ、村尾社長、もう一杯どうです?」
 
 村尾がグラスを差し出した。そして、松野、小山の順にビールを注いだ。
 
「でも、どういうことなんですか? お2人がこんなところで差しで飲んでいたなんて。ネット新聞の共同開発以来、親しいらしいとは聞いていましたけど……」
 
「村尾君が社長になって以来、月に1回のペースで飲んでいる。いろいろあってな」

 松野が村尾に目配せした。
 
「そう。松野さんがいなかったら、僕は今ここにいないだろうな。恩人なんだよ」

●2つの噂

 村尾が笑いながら応じると、小山が口を挟んだ。
 
「社長、やっぱり噂は本当だったんですね」
「噂って、なんだよ」

 松野が遮った。

「社長を前にしてなんなんですけど、3年前の一連の事件の時に流れていたんですよ」
「一連の事件って『サラ金報道自粛密約事件』と『取材メモねつ造事件』のこと?」

 今度は北川が聞いた。
 
「そうです。2つの事件で、うちの特別顧問の富島(鉄哉)が引責辞任に追い込まれたのはご承知だと思いますが、その突然の辞任がなければ……」
「気にしなくていい。続けろよ」
 
 村尾が苦笑した。それでも、言い淀んでいる小山を見て、松野が助け舟を出した。
 
「日々テレビ社長の正田幸男(まさだゆきお)君だろ。若い時から経済部のエース記者として有名だったし、業界でも誰もが富島君の次は彼だとみていた」

 日亜では、合併後のトップ人事はたすき掛けで、合併時は旧日々・政治部出身、2代目が旧亜細亜・経済部出身、以後、旧日々・政治部、旧亜細亜・経済部が交互に社長に就いた。5代目が旧日々・政治部の富島で、6代目は4年下の昭和43年(1968年)入社の旧亜細亜・経済部出身の正田、という路線がコンセンサスになっていた。

「その正田君が、富島君と一緒に詰め腹を切らされちゃった。2つの事件のおかげで、今があるのは村尾君だけじゃないぞ。君もだぜ。わかっているな」
 
 松野が小山を指し、大笑いした。

●大手サラ金との密約

 日亜が2〜3年前まで大都とともに「勝ち組」と喧伝された背景には、合併後一貫して経済報道を重視してきたことがあった。それが企業広告の獲得につながり、大幅な収益の向上をもたらした。合併後に政治部から経済部に移った5代目の富島は経済記者としては二流だったが、役員になって広告を担当、業績拡大に貢献した。それが認められ、社長ポストを手中にした。

BusinessJournal編集部

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