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『ソーシャルもうええねん』著者・エンジニアブロガー村上福之インタビュー

あの異色ブロガーが、“しょっぱい”出版ビジネスの闇に挑む

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 この2カ月くらいで、出版ビジネスについてはずいぶん詳しくなりました。ワケもわからず、取次への営業に「僕も連れてけ!」と無理を言って、いざ出向いてみたら「えっ、著者が来たの? わざわざ連れてこないでよ」なんていやみを言われたこともある(苦笑)。制作を進めているときは、版元や編集担当に対して怒っていることも多かったけど、いま振り返ってみれば面白かったですよ。まあ、これを3回、4回と繰り返すとなると、僕は絶対に飽きるだろうなとも思いましたけどね。

 それもこれも、結果的にはNanaブックスさんだからこそできたことだと、とても感謝しているんです。僕みたいな面倒くさい著者に、文句も言わんとちゃんと付き合ってくれたから。小さな版元だからこその小回りの良さもあったし、刊行数が大手みたいに多くないから、一冊に集中してもらえたのもよかった。……って、まだ終わってないですけどね。これから本を売っていかなきゃいけないし。

●著者は書店営業に同行

ーー刊行直後から書店営業に何軒も同行したり、手書きPOPを書いたりされてますよね。大量に平積みされている書店も多いです。

村上 できることはなんでもしないと。書店へのあいさつ回りくらい、いくらでもやります。全国行脚してもいい、くらいの気持ちです。勝間和代さんの「書く努力の5倍、売る努力をする」じゃないけど、まあ、それくらいの努力は辞さない覚悟ですよ。

 基本、僕はネットの人間なので、できることってネットの中のことが多いんです。それだけじゃダメで、これからはもっと、リアルで売っていく施策を考えなきゃいけない。この本の中に書いてあることって、ネットのコアユーザーとか、ネットでビジネスをしているような人間なら、普通に知っているような事柄が多い。だからこそ、もっと普通の人に読んでほしいんです。

ーー本の内容に目を移すと、ネット界隈、SNS界隈のぶっちゃけトークだけでなく、ジワジワと胸に迫ってくる話、真摯な気持ちになれるエピソードなどがちりばめられていて、グッときました。

村上 えっ、そうですか!? なんかすみません、こんなテキトーなヤツが書いたものなのに。

ーー例えば、会社を登記する際、空欄や記入ミスの多い申請書類を前に、法務局のおっちゃんが懇切丁寧に教えてくれた……のくだり。「これからもな、わからんかったら、人に聞いたらええんや。誰でもなんでも最初から、うまいこといくもんちゃうんやで。人生、勉強やで」というセリフがジワジワ染みました。

村上 1時間半もかけて、丁寧に付き合ったくれたええおっちゃんでしたけど、要するにヒマだったんでしょうね(笑)。

 本の中にも書きましたけど、僕はホンマにアホなんで、とりあえずやってみて、わからなかったら人に聞く、てなことを繰り返してきただけなんですよ。

ーー村上さんの飾らない、正直な人柄は、本書の行間からも滲んできます。経歴だけを見ると、もっとカマすようなところがあってもおかしくない気がします。

村上 調子こいてカマしたりするの、大嫌いなんですよ。あと、僕は大手家電メーカーから社会人生活をスタートさせたので、そこでの経験が影響していると思う。大企業は、ひとつのプロジェクトに関わる人間が多いから、下手なことを言うと後でとんでもないことになるんです。たとえば開発の人間が「この商品、すごいぜ。こんな感じで高性能だぜ。世界一だ」なんて言ってしまうと、「そうか、そんなにスゴイのか。よっしゃ!」と宣伝やら営業の人間がワーッと動きだして、ポスターやパンフレットの制作、PR企画やキャンペーン企画などがどんどん立ち上がってしまう。

 そんな状況でもし「あ、検証してみたらこんな不具合が発生したので、次期モデルでの実装は見送ります」なんて開発の人間が言いだしたりでもしたら、それこそみんなズッコケて大騒ぎになる。だから、まずは話半分くらいで様子を見るような感覚が身に付いてしまったかもしれませんね。大手企業のエンジニアとか、本当に慎重なタイプが多いですよ。臆面もなくカマせるような人って、大きな仕事に携わった経験がないのかもしれません。

 そういう姿勢を大企業病的に揶揄したりする向きもあるかもしれないけど、一方では仕事に対する誠実さにもつながっている側面があるんですよね。ていうか、日本の大手企業は、基本的にはすごく誠実だと思いますよ。現場の人間は特にね。上のほうは、どうしても狡猾さとか腹黒さも必要悪として求められるところがあるから。

 問題を起こしたくないから、起こっても最小限にとどめたいから、リスクヘッジのために控えめに捉えて、あまり大口をたたかず、謙虚に立ち振る舞う必要がある……と言ってしまえばそれまでだけど、そういう誠実さって、丁寧さや責任感を醸成するもの。

 そもそも僕の場合、カマしたりせず、真面目に仕事をして、真面目に生きることって、元も子もない言い方をしてしまえば、そうするのがいちばん面倒くさくないからなんです。まあ、動機はどうあれ、できないことはできない。わからないことはわからない、と正直に言える姿勢はとても重要だと思う。ウソはつかない。正直にやる。そういうのって、大事ですよ。吹いたり、カマしてばかりで実態が伴わないと、最後は信用を失いますから。「僕はアホです。わからないんで教えてください」と言っているくらいでちょうどいい。

BusinessJournal編集部

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