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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第12回

大手新聞社トップ暴露トーク…優秀な記者不要、リークが一番

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大手新聞社トップ暴露トーク…優秀な記者不要、リークが一番の画像1「Thinkstock」より
※前回連載はこちら
大手新聞社幹部、取材しない、記事は書けないが不倫はお盛ん

【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で密談を行う松野と村尾、加えて事情を知らずに姿を現した両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)と小山成雄(日亜)。そこで2人は、合併に向けた具体的な詰めを極秘裏に進めるよう指示されたのだったーー。 

 堕落した大企業のトップですら絶対に口しない、まさしく「本音トーク」を繰り広げる、大都社長の松野弥介と日亜社長の村尾倫郎の会話に耳を傾けていた大都編集局長の北川常夫が、割って入った。

 「そうですよ。あのインサイダー事件でお2人が生き残ったことは、僕らにとっても大きいです。一度聞こうと思っていたんですけど、どうして辞めずに済んだんですか?」
 「そりゃ、決まっているじゃないか。村尾君の場合は、発覚した時期がよかった」

 日亜のインサイダー事件が表沙汰になったのは、2年10カ月前である。村尾が社長に昇格して2カ月後のことだった。

 インサイダー取引をしたのは広告局の次長クラスの社員で、使った内部情報は法定公告の株式分割情報だった。日亜は旧亜細亜以来の伝統で、法定公告では7割のシェアを持っていた。合併で日亜になっても、部数3位で広告料が安いうえ、経済情報を売りにしていたので、大都や国民にシェアを奪われることはなかった。

 その次長がインサイダー取引で得た利益が約2000万円という巨額だったうえ、法人の責任も問う両罰規定の適用の可能性もあった。しかし、引責辞任した前社長の富島が、政治部、経済部の記者を総動員して政官界へ「逮捕、家宅捜索だけはご勘弁を」と働きかけを続けたこともあり、発覚から2カ月後に次長が在宅起訴されただけで済んだ。

 インターネットの急速な普及で、法定公告は新聞への掲載義務が大幅に緩和され、日亜の法定公告売り上げが急減し始めた時の事件だった。事件を機に減少が加速、日亜の広告売り上げ全体の落ち込みの大きな要因になった。

 しかし、インサイダー取引自体が前社長の富島時代に行われていたこともあり、広告担当常務に詰め腹を切らせることで乗り切り、社長就任早々だった村尾は役員報酬を6カ月間2割返上しただけで、引責辞任を免れた。

●リーマン・ショックも追い風に

 日亜のインサイダー事件が一件落着して、1カ月もたたないうち、大都でもインサイダー事件が発覚した。大都の事件は、広告局でなく、編集局が舞台だった。広告情報でなく、記事情報が利用されたのだ。被疑者は整理部記者2人だった。ただ、インサイダー情報による利益は2人合わせても50万円にすぎず、課徴金納付命令で済んだ。

 得た利益は少なかったものの、記事情報を元にしたインサイダー取引だったので、週刊誌も日亜事件と同様に大きく取り上げた。しかし、事件発覚直後に米国のバブルが破裂、リーマン・ショックが起き、世界経済が大混乱に陥ったのが幸いした。

 事件発覚から1カ月後に金融庁が課徴金納付命令を出した時は、マスコミはリーマン・ショックを引き金にした世界恐慌が来る、と大騒ぎの真っただ中で、大都のインサイダー事件も過去の話になっていた。これ幸いと、社長の松野は日亜同様に役員報酬の返上だけで責任をほっかむりして、編集局長と整理部長を更迭、当事者の2人の整理部記者を懲戒解雇して、一件落着となってしまった。

BusinessJournal編集部

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