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幻想に踊らされた人たち

“スキルアップ幻想”の終焉…会社にしがみついたほうが得?

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 そこで何が起きるかというと、自社や自社の上司の悪口を言うようになるのです。結果的に会社を辞めて、転職するわけです。しかし、リーマンショック以降は、外資系企業の日本撤退や日本企業の人員削減が起きて、リストラ候補になった転職者も多くいました。そして、今では「行く末がわからないベンチャーにいます」というのが、かなりあるパターンだと思います。

ーーつまり、「転職したり資格を取得したりしながらスキルアップする」というのは、ある種の幻想だったということでしょうか?

佐藤 転職を繰り返しながらキャリアアップし、今は独立して成功している人も、もちろんいますよ。でも、それはほんの一握りです。そもそも日本には個人事業主が少ないということからもわかります。つまり、そうした「スキルアップ、キャリアアップして成功をつかむ」というのは、大部分の人、9割くらいの人には関係なかったということです。

ーーキャリアアップを目指した転職が、なぜキャリアダウンの転職になってしまうのでしょうか?

佐藤 転職を繰り返しても、その人の中にノウハウがたまらないからです。日本企業には、その会社特有の仕事のやり方があります。例えば、会社の組織で一番転職しやすいのは経理部門だといわれますが、主な仕事は、管理会計といって、会社の中でお金を使う部門との交渉が主な仕事です。でも、経営陣の考え方や経営戦略が会社ごとに違うわけですから、交渉の仕方も会社ごとに異なります。

 また人事も、会社として人材をコストとしてとらえるのか、投資としてとらえるのかで違いますし、営業もエリア営業だったり、業種別営業だったりと、必要とされるノウハウは、会社ごとに違うものなのです。

 それから、社内人脈も重要ですね。自分に目をかけて、引き上げてくれる人の存在が重要です。間違いなく一番重要な社内人脈は、上司ですよ。中途採用がものすごく多い業界であれば別ですけれども、日本企業は、まだまだ中途採用にそれほど寛容ではありません。結局、社内人脈やノウハウがないから、責任ある仕事も任せられず、どんどん悪いほうにいってしまう。それでまた転職しようとしても、ノウハウも仕事の経験もないから、下のレベルの会社にしか職が見つからないという、負のスパイラルに陥ってしまうということです。

●1つの会社で仕事を続ければ、スキルは自動更新される

ーーつまり、転職せずに、最初に入った会社でずっと耐えていたほうがいいということでしょうか?

佐藤 私が取材してきた経験から言えば、例えば銀行や商社の場合、転職せずにずっと働き、それなりに評価されている人は、30歳過ぎくらいから課長代理になり、40歳過ぎから課長や支店長になるのが一般的です。そうなると、給料も上がるし、裁量も持てます。銀行の支店長なんて、持てる裁量はすごいですよ。やはり仕事のおもしろさは、裁量を持って仕事ができるかどうかです。しかも大企業の中でそれができるわけですから、仕事のワクワク度が違います。

ーー著書の中で、「組織の中で仕事をし続ければ、スキルは自動更新される」とおっしゃっていますね?

佐藤 ある程度の会社の経営陣であれば、常に先を見据えて自社の進むべき道を考えていますよ。そのためにコンサルティング会社など、外部のノウハウを活用しています。つまり、会社の上層部は、一般社員では想像もつかないような、今後自社の進むべき道や事業の方向転換などについて青写真を描いているわけです。そして、その青写真にのっとった、社員の未来の仕事像も考えています。

 例えば、商社は今から15年ほど前までは、メーカーと海外企業との取引の口利き的な仕事が多かった。しかし、今は自らリスクを取って、エネルギー事業などに投資する、投資会社に変貌を遂げています。その間に、商社マンの仕事は、いわゆる営業マンから、より専門性の高い交渉人のような仕事に変わりました。

 あるいは私の知り合いに、ここ10年で急成長した会社の広報部の女性がいますが、彼女はここ10年で「ただの取材の口利き」から、「英語・中国語を駆使するグローバル広報の看板役」に成長しました。会社がグローバル展開を始めたため、東南アジアのマスコミ陣とも交渉する必要があり、自然と語学やグローバルな折衝力が身につき、人脈ができたというのです。

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