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東レ、“斜陽”繊維事業で高収益のカラクリ ユニクロとの提携、他社と逆行…

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東レ、“斜陽”繊維事業で高収益のカラクリ ユニクロとの提携、他社と逆行…の画像1「東レ HP」より
 昨年から、東レ繊維事業が何かと話題になっている。旅客機・ボーイング787の機体にも使われて話題を集めた炭素繊維ではない。「技術が枯渇した成熟産業」と言われている合成繊維のことだ。わが国では落ち目の三度笠のはずの事業が、東レに限っては業績がすこぶる好調なのだ。

●奇跡ではない東レの繊維復活

 東レの合成繊維事業が話題となるきっかけは、昨年5月に発表した2012年3月期連結決算の内容だった。同社はこの決算で売上高が前期比3.2%増の約1兆5900億円、営業利益が同7.6%増の1077億円、経常利益が同11.1%増の1098億円、当期純利益が同10.9%増の642億円となり、営業、経常、純益の三益が過去最高を更新した。

 これだけなら騒がれることはなかったのだが、その牽引役となったのが斜陽のはずだった繊維事業だったことから、繊維業界のみならず、産業界全体から注目を浴びる結果になったのだった。

 具体的には、同決算のセグメント別で繊維事業の売上高は前期比9.3%増の約6400億円、営業利益は同39.7%増の453億円で、営業利益が20年ぶりに過去最高を更新、稼ぎ頭に返り咲いた。

 以降、「奇跡のV字躍進」と呼ばれ、メディアにしばしば取り上げられてきた。しかし、同社の繊維復活は、奇跡でも不思議でもなんでもない。東レの歴代トップたちが継承してきた「繊維事業を守る」という強い意思の結果にほかならない。

●脱繊維の流れに抗して20年

 まずは繊維復活までの経緯を、簡単におさらいしておこう。

 東レは1926年、三井物産がレーヨン(人造絹糸)製造を目的に設立した事業会社。その後、ナイロン、ポリエステル、アクリルの三大合成繊維の開発・生産を中心に成長してきた。バブル景気ピーク時の91年は、繊維事業の営業利益が400億円を超え、東レは全営業利益の半分以上を合成繊維で稼いでいた。だがバブルがはじけると、同社も他社同様に繊維事業で苦しむことになる。

 中国をはじめとする新興国の低価格品が国内市場を席巻、「国産繊維」を駆逐し始めたからだ。新興国勢の低価格攻勢に押された国内繊維業界は、「脱繊維」を目指し、メーカーは繊維事業の縮小・撤退と非繊維事業の育成に躍起となった。

 例えば、帝人は医薬品事業への参入、クラレは合成樹脂や化成品への主力事業転換などでしのいだ。繊維工場を閉鎖して広大な跡地に商業施設を誘致、賃貸収入で生き残りを図るメーカーもあった。

 そうした中で、業界ぐるみの脱繊維に同じず、ただ1社「孤高の繊維死守」を貫いたのが東レだった。

「痩せ我慢」「井の中の蛙」「木を見て森が見えない視野狭窄症」……

 証券アナリストや投資家からさまざまな揶揄や批判を浴びながらも、東レはナイロン、ポリエステル、アクリルの三大繊維への開発投資を続け、繊維事業を縮小しなかった。

●ユニクロとの共同開発

 その先にあったのが、ユニクロを展開するファーストリテイリングとの共同開発で03年に発売した機能性肌着「ヒートテック」のヒットだった。人体が発散する汗などの水分を吸収して熱に変える、吸湿発熱繊維を肌着に採用したヒートテックは。「薄くて温かい」と冬の肌着の定番となり、03年から11年までの累計販売枚数は、2億9900万枚に達している。また、11年だけでは過去最高の1億枚を記録、12年は1億3000万枚の見込みになっている。

 ヒートテックのヒットは、06年の両社の事業提携(戦略的パートナーシップ)に発展、この提携から夏向けの機能性肌着「シルキードライ」、軽量ダウン衣料「ウルトラライトダウン」などのヒット商品も生み出している。

BusinessJournal編集部

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