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『メイド イン ジャパン 驕りの代償』著者・井上久男インタビュー(1)

「展望見えない」(津賀社長)パナソニック、多様性排したソニーの“劣化”

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パナソニック本社(「wikipedia」より)
「シャープ、4500億円の赤字」
「パナソニック、7650億円の赤字」

 日本を代表する大手電機メーカーは、前期に引き続き、2013年3月期決算でも厳しい見通しを発表している。
 
 これまで日本の成長を牽引してきた家電・自動車業界で、一体何が起こっているのか? 倒産の危機に陥った巨大電機メーカーの話を描くNHKドラマ『メイド イン ジャパン』(1月26日から3週連続で放送)の「原点」にもなった『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)の著者で、ドラマの脚本づくりに当たって取材協力をしたジャーナリスト・井上久男氏に、

 「大手電機メーカー凋落やトヨタの経営の劣化の原因は何なのか?」
 「経営者という人材の劣化」
 「企業再生の復活への道」

などについて聞いた。

●社長自ら「展望が見えないことが危機」と告白するパナソニック

ーーまず、パナソニックについてお聞きしたいのですが、2013年3月期の業績見通しについて、500億円の黒字予想から一転して、7000億円を超える赤字に下方修正しました。これで2年連続の大幅赤字となるわけですが、なぜこれほど業績見通しが狂ってしまったのでしょうか?

井上久男氏(以下、井上) 三洋電機の買収に8000億円もの資金を投じてしまったのが、大きな要因の1つです。三洋電機がかつて誇ったリチウムイオン電池や太陽電池の高い競争力に期待をかけたのだと思いますが、中国や韓国勢に追い上げられ、買収時点ですでに競争力を失っていました。結果的に完全子会社にしたものの、買収額よりも時価評価純資産が減少して、のれん代を減損処理しなければならなくなり、巨額の当期赤字に陥りました。

 また、商品として競争力の低いプラズマテレビへの巨額投資を続けたことも赤字要因の1つです。私は、11年12月に、「パナソニックは1兆円の赤字になる」という記事を書きました。多くの関係者に取材し、確証を得て書いたのですが、実際にパナソニックが発表した12年3月期の業績は、過去最高額となる7721億円の赤字でした。これだけの巨額赤字を発表したということで、多くの人が「パナソニックはすべての膿を出した」と考えました。ですが、私は「この決算は甘すぎる。三洋電機の減損処理はもっと必要になる」と思っていました。案の定、前期の減損処理だけでは足りず、前期と今期合計で1兆5000億円規模の当期赤字になるわけです。結局、前期の決算処理は見通しが甘かったことになります。

 中村邦夫会長・大坪文雄社長時代に、処理すべき案件を先送りしたのではないかと思いますね。昨年6月に就任した津賀一宏社長は今、前任者の残した負の遺産の処理に苦しんでいるのです。「現実を直視する」と新社長も言っていますので、先送りしないで一気に処理しているのでしょう。

ーー三洋電機の電池事業がすでに競争力を失っているということを、パナソニックは事前に把握できていなかったということでしょうか?

井上 いいえ。もちろんわかっていたと思いますよ。買収するにしても、シナジー効果の期待できる事業だけを買えばまだよかったのですが、メインバンクである三井住友銀行に大きな「借り」があり、それを返すための買収だったのです。つまり、経済合理性のない投資をしたわけです。

ーー三井住友銀行への「借り」とは何ですか?

井上 パナソニックグループの不動産会社で松下興産という会社がありました。05年にバブル期の放漫経営から特別清算を余儀なくされたのですが、その際にパナソニックは、三井住友銀行に頼んで債権放棄してもらったのです。それが「借り」です。同行がメインバンクを務める三洋電機は経営が悪化し、同行も持て余してきたので、パナソニックに経営を引き受けてもらうしかなかった。「借り」を返せということで、パナソニックに三洋を押し付け、丸ごと買わせてしまったわけです。この場合、押し付けたほうよりも買ったほうが悪いと思います。

BusinessJournal編集部

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