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『メイド イン ジャパン 驕りの代償』著者・井上久男インタビュー(1)

「展望見えない」(津賀社長)パナソニック、多様性排したソニーの“劣化”

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 三洋電機の将来性や自社との相乗効果などを判断して買収するのが常道ですが、パナソニックはそれを踏み外したわけです。買収後に電池事業を減損処理するだけではなく、三洋の洗濯機や冷蔵庫の事業に至っては中国のハイアールに安く売却し、ハイアールは三洋の事業をベースにして日本やアジアの市場を攻め取りに来ています。敵に塩を送ったのも同然です。どこかちぐはぐで、戦略性も経済合理性もない投資をしてしまったのです。

ーー来期以降、パナソニック復活の可能性について、どのように見ていますか?

井上 今のままでは厳しいですね。去年12月に京都で理事以上の待遇だった幹部OBが集まる「客員会」が開かれ、そのときに津賀社長は、「パナソニックの危機というのは2年連続の大赤字ではない。将来展望がないことのほうが危機だ」と挨拶したそうです。2年連続で膿を出して、これからと周囲も期待しているときに、「将来展望がないことこそが危機の本質だ」ということは、今後の復活のための青写真が描けないということですからね。事業部制を解体して中央集権化を進め、現場から商品開発力を削いだ「中村改革」の弊害がまさに出てしまったわけです。

 つまり、これは経営者の完全な判断ミスです。もちろん人間だからミスは犯します。大事なのは、ミスを犯したとわかったら、率直に認めてリカバリーに動くことです。中村会長・大坪社長時代は、間違いを間違いと認めずに隠そうとしたわけですよ。特に中村氏は強権政治で意見を異にする役員を排除する傾向にあって、大坪氏も傀儡社長ですから、周囲はイエスマンだらけで、軌道修正の利かない会社となり、「傷口」を広げた感があります。その結果、63年ぶりの無配転落ですから、外国だったら株主代表訴訟の裁判が起きてもおかしくないです。同様にシャープ凋落の本質も、経営者による「人災」の感があります。

●隙だらけの経営・シャープ

ーーそのシャープですが、こちらも2年連続の巨大損失が避けられない見通しで、去年11月にはS&Pが格付けを3段階引き下げました。

井上 片山幹雄会長の社長時代の経営判断ミスが、現在のシャープの経営危機を招いたと思います。さらに新社長の奥田隆司氏の判断のスピードが遅かったり、外部のコンサルタントに経営を丸投げしていたりして、経営者としての能力の低さが危機を拡大させています。シャープというのは、もともと商品開発力に長けた会社でした。いろいろな部署から人材を集めて全社横断の緊急プロジェクトチームを立ち上げ、とにかく大胆な発想のもとで、ユニークな商品を開発してきました。そういう中で生まれたのが、「ザウルス」やプラズマクラスターの空気清浄機などです。

 また、液晶や電子の目と呼ばれる「C-MOSセンサー」などシャープの持っている強い技術を組み合わせて「こういうのを作ったらおもしろいのでは?」という発想から生まれたのが、世界初のカメラ付き携帯電話ですよね。技術者がおもしろがりながら仕事をする風土の会社だったのですが、「液晶王国」と持てはやされている間に、こうした風土が消えて、大企業病が蔓延してしまいました。

ーー液晶事業の外販でもつまずいたと、指摘されていますね。

井上 液晶の需要が逼迫していた頃、シャープは外販よりも自社向けを優先していました。亀山工場までは、シャープは自社製品に使う液晶の生産が中心だったので、その売り方でもよかったのですが、堺工場を新設して液晶事業を拡大して、外販を強化するビジネスに軸足を移していった際には、自社への供給を優先させていたら、顧客はシャープを信用しなくなります。堺工場を新設した時点で営業戦略を方針転換しなければならなかったのに、それができていなかった。油断と隙だらけだったわけです。

 また、以前のシャープには「供給が需要を上回ってはいけない」という鉄則がありました。そして、設備投資を厳しく管理している副社長がいました。メーカーというのは、過剰設備に陥り、稼働しない設備と働けない従業員を抱えると、一気に赤字になりますからね。でも、片山氏はこうした考えが商機を逸すると考え、一気に莫大な投資に走った。その副社長も退任して、誰もストップをかけられる人がいなくなった。

 片山氏は攻めの経営は得意でも、守りは「穴」だらけでした。借入金で巨額の設備投資を行っているわけですから、転換社債の償還資金などの手当てが必要になりますが、役員の中に財務のプロも置いていなかった。この何年間か「金庫番」がずっと不在だったわけです。何年も前から社債の償還時期はわかっているわけですから戦略的な資金繰りをしなければなりませんが、それも怠っていた。そして、今になって今年9月に来る2000億円の転換社債の償還で慌てている。現時点では償還資金のめどすら立っていません。だから隙だらけの経営を行ってきた、と言っているわけです。円高で韓国企業との競争に負けたことが経営危機の原因ではないとだけは、はっきり申し上げておきます。シャープの危機も、無能な経営者による「人災」です。

ーーシャープの再建に向けた、この先の見通しはいかがですか?

BusinessJournal編集部

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