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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第14夜】

「自殺者は部屋が汚い」特殊清掃人を変えた自殺と孤独死のリアル

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 しかし、彼のように若くても感情を抑えられるからこそ、特殊清掃の仕事も出来るのかもしれない。だが、それではいけないと社長は言う。ある孤独死と対面した時、社長は耐え切れなくなって外に出た。その人の職業が「清掃業」だったからだ。自分の過去と重ね、感情移入してしまったのだ。一方、若者は黙々と仕事を続ける。この現場で二人の仕事に対する明確な差が浮き彫りになってしまった。

 社長は行きつけの寿司屋に彼を誘う。「亡くなった人から何かを学べよ。俺はこの生き方で間違ってなかったのか教えて下さいって。現場で涙しながら作業するくらいになって欲しい。そうなった時にお前自身は大きく変わる」。この言葉を若者は黙って聞くが、僕には社長が自分自身に問いかけているかのようにも見えた。

 そして若者は変わる。ある清掃の場で、依頼人が彼のことをこう語っていた。「ほかの業者は靴を脱がなかった。でも彼は靴を脱ごうとしてくれた」と。

 さて、冒頭にある社長が結婚を決めた理由は、いくつもの死の現場とある若者の成長を通して見事に描かれていた。死に様を通して生き様を見せる、見事な構成だったと思う。そして不思議とポジティブな気持ちにもなれた。

 ラストの「家庭を持てるような男になりたいって思うようになった」という言葉が、とても暖かく聞こえた。
(文=松江哲明/映画監督)

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