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テロ事件の影響でコンクリ壁と鉄条網、外出は憲兵つき

損失800億円!アルジェ事件で表面化した新興国テロリスク 鹿島・伊藤忠ほか進出企業の苦悩

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 工事は2006年10月に着工。完成は当初、2010年2月のはずだった。だが、工事は遅れに遅れて、完成したのは7割程度。トンネルだけでも14本あるのに地盤が脆く崩壊しやすい山を掘削する難工事だ。ゼネコンが得意とする耐震性に優れたハイテク工法がまったく役に立たなかった。さらにテロ対策で火薬の持ち出しが制限されており、発破などの作業が具合良くできなかったなど様々な制約があって遅れた。

 アルジェリア側は工事の遅れを理由に、完成している部分の代金の支払いを拒否している。JVの代表である鹿島は発注者であるアルジェリア高速道路公団と交渉したが、交渉は難航。JV各社は2011年3月期決算で800億円の工事損失引当金を計上した。

 いま、高速道路建設はどうなっているのか。

 日本経済新聞電子版(2013年1月30日付)はライター中川美帆氏が日経BP社の建設・不動産サイト「ケンプラッツ」(1月30日付)に掲載した「アルジェリア高速工事の現場は今」を転載している。

 中川氏の現地レポートは凄まじいばかりの警備体制を伝える。日本人が暮らしている総合事務所とキャンプはコンクリートの壁に囲まれ、壁の上部には鉄条網が張りめぐらされている。銃を構えた見張りが24時間体制で警備。日本人がキャンプの外に出る際はアルジェリア軍の憲兵が同行することになっている、という。

 では、工事の状況はどうなっているのか?

「現在の開通区間は250kmにとどまり、全体の進捗率は80%程度。完成までに、あと2年かかる見通し。しかも、インターチェンジの新設など膨大な追加工事を求められている。既設工事の未払い分だけで現在の損失は1000億円を上回る、との見方が関係者の間にある」

 それでも人質事件で日本企業を取り巻く環境に変化の兆しが出てきた。

 アルジェリア政府は1月28日付で国際石油開発帝石の子会社に対して、天然ガス開発の新たな許可を与えた。人質事件が起きたイナメナスのガス施設と同じイリジ県にあるブランドで、アルジェリア国営ソナトラック社(権益67%)、イタリアENI社(同22%)、国際帝石(同10%)のシェアになっている案件だ。

 人質事件後、治安への懸念から、このガス田から外国人労働者250人が離脱した。朝日新聞(1月31日付)はアルジェリア発として<現地では「外国企業の流出を防ぐため、この時期にあえて(許可を)発表した」との見方が出ている>と報じた。

 高速道路を請け負ったJVの中からは巨額な赤字を出していることもあって「(工事から)撤退すべきだ」との声が出ているが、高速道路はアルジェリア政府の国家プロジェクトだ。「追加工事分の一部を支払うというアメを差し出して、撤退を食い止めようとするのではないか」と囁かれている。

 アルジェリアに進出している企業はテロなどの物理的、人的リスクだけでなく、投資リスクにもさらされている。

 だからといって、商機を逃がすわけにはいかない。原油埋蔵量122億バレル、天然ガス4兆5000億立方メートルといわれ、鉄鉱石なども豊富な“宝の山”だ。新たな資源として注目されているシェールガスもある。フランスやスペインにも近く、企業にとってアフリカ進出の足がかりとなる国なのである。おいそれとは逃げ出せない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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