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首切りで難を逃れようとする資生堂の無責任体制が露呈

資生堂、中国事業の失速で業績不振 ネット通販主導の社長は2年でクビと大混乱

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「アジアを代表するグローバルプレーヤー」を目標に、18年同期には海外の売り上げの比率を50%以上に高める中期計画を掲げ、成長エンジンは完全に海外市場に移った。

 次の成長ステージに入るために、改革のバトンを渡された第3走者が末川久幸氏だ。末川氏は経営企画部長として前田氏の参謀役を務めた。池田氏の参謀役だった前田氏が社長になったのと、まったく同じパターンである。

 末川氏は3代にわたる資生堂一家である。祖父は資生堂の専務、両親も、そして末川氏の妻も資生堂に勤めていたという。

●全国の加盟店がネット直販に猛反発! これが引き金に

 大正時代から続く販売組織、チェーン店を基本とするビジネスモデルからの大転換。これが末川社長の使命だった。資生堂の成長を支えてきた全国各地の専門店への配慮から、資生堂がエンドユーザーに直接販売することは、ご法度だった。通販はタブー視されてきた。

 だが、国内の販売チャンネルが競争力を失った現在、ネット販売への参入は避けて通れない道だった。新社長に就任した末川氏は、11年4月からスタートした第2次3カ年計画の柱に、ネット通販事業への参入を据えた。1年の準備期間を経て、12年4月、ネット通販サイト「ワタシプラス」を開始した。

 予想されたことだが、専門店からの反発はすさまじかった。トラブルは開始後まもなく発生した。

「オンラインショップで、今すぐお買い物してみませんか」。資生堂は、登録した会員に対して、こんな内容のメールを配信。化粧品販売店にしてみれば、長年築いてきた顧客を資生堂が奪おうとする行為に映った。これに激怒した化粧品専門店の業界団体である全国化粧品小売業協同組合連合会は、組合員に対して新制度への移行作業を中止するよう指示を出す寸前までいった。

 資生堂は慌ててメールの記述を見直したが、結局、ネット通販は出足からつまづいた。ネット通販の売り上げが伸び、化粧品専門店の売り上げが減れば、リアル店舗とネット通販の対立が再燃する可能性は高かった。一口にビジネスモデルの転換というが、双方とも生き残りがかかっているだけに口で言うほど簡単ではないのだ。

 その結果、ネット通販を主導してきた末川氏を見捨てて、あっさりクビにし、前田氏が再登板するという今回の変則的なトップ人事となった。

 しかし、これまで、前田氏と末川氏が二人三脚で改革に取り組んできたことは明らかだ。経営は結果責任である。トップとして結果を出せなかったと判断したのであれば、末川氏だけでなく、前田氏も一緒に引責辞任するのが筋である。歴代社長である福原、弦間、池田の3人の相談役に報告して、時計の針を逆に戻す人事が了承されたが、結局、人事権を握っているのは福原義春・名誉会長兼相談役なのではないのか。

 資生堂の社長交代で浮かび上がったのは、名門という、豊かなイメージとは裏腹な、極端な人材不足である。町内会でもあるまいし、仲間内でトップの椅子をタライ回しにして良い結果が出るほど、経営は甘くはない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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