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反応さまざまなあのニュースをどう読む?メディア読み比べ(3月25日)

平均収監2年以上! 日本人12名が米国で刑務所送りに

文=blueprint
JEF古河電工はJEFの母体でもある。(「古河電工HP」より)

 日本の自動車部品メーカー社員12人が、米国で反トラスト法違反に問われ、人知れず収監されていた――。

 そんな衝撃的なニュースを伝えたのは、3月25日の朝日新聞朝刊だ。同紙によれば、収監された12人は矢崎総業、古河電工、デンソー、埼玉県の部品メーカー(捜査中のため名前非公表)の部長クラスの現役社員。日本の独占禁止法にあたる反トラスト法に違反したとされ、2012年から今年にかけて、禁錮1年1日~2年の有罪を認める答弁をしたという。

 12人の中には、米国法人の支店長や営業担当幹部だけでなく、日本国内のトヨタ自動車やホンダ向け営業部門の担当部長も含まれている。国内勤務社員の中には、「今後のビジネスへの影響を考慮」(同紙)したうえで、みずから収監覚悟で渡米したケースもあったようだ。12人が問われているのは、自動車の電気配線のワイヤハーネスや、エアコンを調整するヒーターコントロールパネルなどについて、シェアや価格維持のために事前の受注調整(カルテル)を行った疑い。朝日新聞によると、話し合いは米国や日本国内で開かれたとされ、米司法省は12人のうち少なくとも3人が「中心的な役割を果たした」と見ている。

 収監された社員を出した会社では「現地がどんな法制度なのかさえ知らなかった」「パニックになった」と、一連の捜査に関して驚きの声を発しているという。日本でも価格カルテルは違法であり、刑事事件に発展することはある。しかし、「公正取引委員会が下すのは企業への課徴金納付命令など行政処分が主」(同紙)。

 こうしたカルテルに対する法意識の違いと、海外当局によるチェックへの備えの甘さが、今回の摘発劇を生んだと言えそうだ。なお、米司法省の捜査は今も続行中であり、欧州連合の捜査も開始されたことから、今回の部品カルテル事件でさらに摘発者が増える可能性もある。

 今回の記事は朝日新聞独自のものであり、ほかのメディアがその後に追加報道を行った形跡はない。記事を執筆した朝日新聞ニューヨーク支局の中井大助記者は、自身のTwitterで「独自ダネというほどではありませんが、今まで五月雨でしか出ていなかった動きをまとめました」と記しており、2010年から捜査が始まった今回の部品カクテル事件について、各社が一定の報道を行なってきたのも事実。ただし、今回の記事が明らかにしたように、日本で勤務しながらも米国の刑務所に収監されるケースがあることは、十分に周知されているとは言い難い。海外向けにビジネスを行う際のリスクとして、より詳しく報道する価値はあるのではないだろうか。

 また、中井記者もTwitter上で認めているが、今回の記事では12人の社員がどのような状況で有罪を言い渡され、収監されるに至ったかについては明らかにされていない。日本在住のまま有罪に問われたとしても、国内にとどまっている限りは収監されないが、今回のケースでは前述のように、複数の日本人社員が自ら米国入りしている。彼らは渡米にあたって、会社とどのような約束を交わしたのか。また、会社側はどんな形でバックアップしているのか。会社と社員の関係という点でも、多くのビジネスパーソンにとって大きな関心事であるはずだ。

 ネット上では、今回の件をTPP加盟問題と結びつけ、「TPPに加盟すれば、今回のような事例がさらに増える」と危惧する声も出ている。もっとも今回のケースに限らず、ここ数年、米国や欧州連合の当局が他国メーカーによるカルテルを摘発し、高額の制裁金を科す事例が頻発しているのも事実。朝日新聞では、米国の弁護士の「日本企業は法制度への知識不足が目立つ」との声を紹介しているが、「よく分からないうちに刑務所送り」という悲劇を避けるためにも、各社は自社の海外展開について、今一度リーガルチェックを行う必要がありそうだ。
(文=blueprint)

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総合カルチャーサイト「Real Sound(音楽・映画・テック・ブック)」の運営や、書籍や写真集の発行、オウンドメディアの制作支援など“編集”を起点に様々な事業を行っている。
株式会社 blueprint

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