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西武HDへTOBサーベラスの迷走…西武からの質問に明確回答避け、非合理行動続ける理由

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 確かに昔からサーベラスは、他の外資系のファンドと異なり、日本法人にまったく権限がないことで有名なファンドだ。実際のところは権限がないというよりは、日本法人は投資案件を捜すためだけの役割なので、権限を与える対象としてふさわしくない組織と言ったほうがいいのだろう。

 この記者ブリーフィングの場で、サーベラス側はひたすら「西武HD側が対話を拒否しているから、対話を再開するためのTOBである」「筆頭株主と対話をしないということこそが、ガバナンスが正常に機能していない証拠だから、ガバナンスの正常化のために取締役3人を送りこむことを提案している」と、この2点を何度も繰り返した。

 一方この場で各社の記者が、入れ代わり立ち代わり最もしつこく質問を繰り返したのが、なぜ追加取得が4%なのか、という質問だ。

 3分の1の議決権を握れば拒否権を発動できるのだが、株主総会の出席率が100%になるということはまずありえない。すでに32.44%の議決権を保有しているということからすると、拒否権の獲得のためなら、事実上すでに獲得済みと言っていい。

 この質問の趣旨は、「拒否権獲得はすでに達成済みなのに、経営権獲得(5割超)を目的にしたものでもない。そんな中途半端な株数の買い増しに191億円も使う合理的な理由がないじゃないか、あるなら教えてくれ」というものだ。

●200億円あったから、とりあえず4%?

 だが、何度も誰が聞いても「対話再開のために4%」としか説明しないのだから、誰も納得するわけがない。会見終了間際になって、同席していた岩倉弁護士が突然鈴木社長に出した助け船が「カネが200億円あったからって言えば?」である。200億円を1400円で割ったら、たまたま4%だったというのだ。これが事実ならサーベラスに投資している投資家は怒り心頭のはずだ。

 本件は、会員制月刊誌「FACTA」「選択」が、すでに両者の詳細な交渉経過を報じている。「FACTA」はサーベラス側に立って西武HDの後藤高志社長を徹底して無能な経営者として批判、「選択」は西武HD側に立ってサーベラスによる恫喝だという論調だ。

 西武HD側は「上場プロセスの交渉経過は、上場審査基準上、公表できない」という理由で、奥歯にモノがはさまったような中途半端な説明に終始。サーベラスも当初は日本法人の電話番号すら公開しておらず、まともに取材に応じる対応に転じたのは3月の2週目あたりからだ。

 当事者の説明が今ひとつはっきりしない分、上記月刊誌2誌の報道は実に説得力がある。3月27日のブリーフィング会場に集まっていた記者は、前日の西武HDの会見内容とともに、基本的に月刊誌2誌の記事の内容を頭に入れて臨んでいる。

 その前提で言えば、今回のTOBは「追加取得をすれば西武経営陣がびびって言うことを聞くかもしれないが、どのくらい買い増せばびびるのかがわからない。だから、とりあえず1万3000人以上いる西武の個人株主の中に、売り手がどの程度現れるかをさぐるための、“とりあえずの4%”なんだ」と説明してくれれば、腑に落ちる。もし、“とりあえずの4%”なのであれば、それで西武HDが言うことを聞かない場合は、徐々に取得株の割合を引き上げることになるはずだが、サーベラスはこれ以上の追加買収を明確に否定しているから、サーベラス側のロジックがわからなくなるのだ。

●無邪気な改革案は「提案」か、それとも「強い要請」か

 一連の騒動で最も注目を集めているのが、米サーベラス本社のファインバーグCEOから西武HDの後藤社長に宛てた昨年10月12日付の手紙だ。

 サーベラス側は単なる提案レベルのもので強く要請した覚えはないとし、西武HD側は強い要請だったと主張している。月刊誌「選択」は赤字鉄道路線の廃止やプロ野球球団・埼玉西武ライオンズの売却、高輪品川地区の再開発などの計画を盛り込んだ中期計画の立案と対外公表を、サーベラスが強く迫ったと報じている。売出価格に不満を持ったサーベラスが、「この内容で中期計画を出せば、西武への市場の評価が高まって、株式の売出価格が上がる」ことを狙ったという。

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