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『徹底検証 韓国論の通説・俗説』浅羽祐樹氏に聞く

「竹島」「慰安婦」問題をクリアするために求められる知性と戦略と論理とは?

構成=本多カツヒロ
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「竹島」「慰安婦」問題をクリアするために求められる知性と戦略と論理とは?の画像1浅羽祐樹氏らによる話題の書
『徹底検証 韓国論の通説・俗説』
 近年、日本では、K-POPや韓流ドラマが盛り上がる一方で、韓国との関係は竹島問題や慰安婦問題といった政治的要因により冷え込んでいる。

 そんな中、「韓国は感情的で、分からない国」という声をよく聞くが、そんな韓国側の感情や論理への理解を深められる本が『徹底検証 韓国論の通説・俗説:日韓対立の感情vs.論理』(浅羽祐樹、木村幹、佐藤大介著/中公新書ラクレ/2012年)だ。また、今年2月、韓国史上女性初の大統領に就任したパク・クネ(朴槿恵)氏。パク大統領が今後、日韓関係でどう動くか気になるところだが、彼女のしたたかさや戦略について書かれたのが『したたかな韓国:朴槿恵時代の戦略を探る』(浅羽祐樹/NHK出版新書)だ。

 今回、この2冊の著者であり、日韓関係について積極的に発言している山口県立大学国際文化学部准教授の浅羽祐樹氏に「韓国における日本のプレゼンスの変化」「竹島問題」「パク・クネ大統領」などについて聞いた。

–近年の日韓韓流ブームもあり、友好的ムードがある一方で、政治的にはかなりギクシャクした関係にあります。国内を見ても、内閣府が2012年10月に行った「外交に関する世論調査」によると、「日韓関係が良好ではない」と回答した割合が78.8%と過去最高を記録しています。友好的なムードと世論調査の差について、どうお考えでしょうか?

「竹島」「慰安婦」問題をクリアするために求められる知性と戦略と論理とは?の画像2韓国政治や日韓関係について
積極的に発言している浅羽祐樹氏
浅羽 韓国の全体像を知らないことが大きいのではないでしょうか。一部分、例えば、韓国の芸能や食、あるいは竹島や慰安婦については異常に詳しいけれども、一つひとつをつないで「一枚絵」を描ける人はほとんどいない。これには韓国を専門にしている研究者やメディアがそうした読解法を伝えきれていないという側面もあります。

 2012年8月に「親日」と思われていたイ・ミョンバク(李明博)前大統領が突然竹島に上陸したり、慰安婦問題を執拗に取り上げたり、挙げ句の果てに、自ら訪韓を要請しておきながら天皇に対して謝罪を要求しました。こうした中、多くの人にとって「韓国は中国と同じように不可解な国」と映ったのでしょう。

 しかし、イ・ミョンバク前大統領による慰安婦問題の再燃にしても、韓国国内の事情を知らなければ理解できません。そのため、どうしても過剰に反応してしまう。ですから現状をしっかり理解し、韓国が何に対し怒り、理屈を立てているならどういう理屈なのか、さらにそれが世界の標準的な考え方と合致しているのか、外れているのかを見極める必要がある。そこで韓国の全体像をお伝えし、なおかつスタンダードな読解法を提示できればと思い、この2冊の本を企画しました。

–韓国にとって日本はどんな存在なのでしょうか?

浅羽 1965年に日韓が国交正常化をした時代には、韓国にとって頼ることのできる国はアメリカと日本しかなかったのは事実です。安全保障にせよ、貿易の相手にせよ、商売の仕方から法律までの様々な物事の仕組みにせよ、日本は韓国にとって学ぶべきモデルでした。そのため、ごく最近まで日本人の多くは韓国を対等な相手と見ることができず、格下だと侮ってきました

 しかし、2011年、韓国のGDPは世界第15位となり、堂々と先進国の仲間入りを果たすようにまでなりました。それに伴い当然、外交や貿易の相手も多様化していきます。貿易に関しては、確かに日本との貿易の絶対額は増えています。しかし、貿易相手が多様化したため、日本との貿易が全体に占める割合は下がっていて、今や中国の4分の1ほどです。つまり、数ある選択肢のうちのひとつでしかなくなりつつあるということです。貿易だけではなく、韓国にとって日本のプレゼンスは下がっています。好むと好まざるにかかわらず、こうした変化した現実をまずはしっかり認識しなければならない。

慰安婦問題デモの参加者数、実は……

–日本のプレゼンスが下がっている象徴的な例はどんなことでしょうか?

「竹島」「慰安婦」問題をクリアするために求められる知性と戦略と論理とは?の画像3『したたかな韓国 朴槿恵時代の
戦略を探る』(NHK出版新書/浅羽祐樹)

浅羽 例えば、韓国政府の外交部を見ると、東北アジア局長という、日本の外務省でいえばアジア太平洋局長にあたる主要ポストがあります。これまでは日本課長を務めた人物が東北アジア局長に昇進するのが通例でした。しかし、そろそろ中国課長を務めた人物が東北アジア局長になるのではないかと言われています。つまり、アジアを専門にするエリート外交官の中で、今までは一番の出世コースは日本課長でしたが、これからは中国課長になるのかもしれません。

 また、パク・クネ大統領が就任演説で外交について触れた際、「アメリカ、中国、日本」という順番で国名を挙げ、日本が初めて3番目になりました。また、大統領が各国の大使に会う順番も中国の後でした。それだけ日本より中国のプレゼンスが増しているということです。

–韓国の一般の人たちの間ではどうでしょうか?

浅羽 日本に対する関心がなくなってきています。普段は関心がないため、深い知識がないのに、ひとたび事が起きると激しいリアクションが見られるというのが実情です。

–しかし、日本のテレビなどでは、韓国内での反日デモの様子などが伝えられます。

浅羽 テレビカメラがデモの様子をズームアップして撮っていることもあり、多くの人が参加しているように見えますが、実際には広がりがある運動とはいえません。例えば、毎週水曜日に慰安婦問題を理由に日本大使館前でデモが行われていますが、いつもは20人くらいが参加しているだけです。

 ただ、参加者の人数とは関係なく、テレビカメラの前で韓国人に「独島は?」と訊くと、誰もが「我々の領土」と答えます。日本は自由な国で、竹島がどこにあるか知らなくても周りの人から白い目で見られることはないかもしれません。しかし、韓国では公の場で、「独島」や慰安婦問題について訊かれれば、お決まりの答えしか許されない「国民情緒」がある。これは大統領が誰であろうが、支持率が高かろうが、韓国から出てくる声はひとつしかないということです。ただ、私的な席で話すと、実は多様な意見があるということが分かります。この両方を見ないといけない。

–そのように答えるように、学校で教育されているのでしょうか?

浅羽 「反日」教育をしているからというよりも、韓国は一体どこまで自由な国になったのかということの問題で、領域によってはまだ発言の幅が限られているということです。例えば、かつては北朝鮮に関してもタブーが多かったので、みんなが同じことを答えていましたが、今では実に多様な意見が出るようになりました。唯一タブーが残っているのが、日本との竹島や慰安婦に関する問題です。なぜ「独島」が韓国領であるのかについて韓国人が詳しく知っているかといえばそうではなくて、「我々の領土」という結論だけを覚えていて、それ以外はすべて、「妄言」や「歴史歪曲」になるのです。

パク・クネ大統領の対日路線とは?

–韓国人が公の場で「独島は我々の領土」と答える一方で、韓国政府はこの問題をめぐり日本と国際司法裁判所で万が一にも争うことになった時のために、準備をしているということですが。

浅羽 昨夏、イ・ミョンバク前大統領が竹島に上陸しました。これに対し、国交正常化以来初めて、日本は韓国に対し、国際司法裁判所への共同提訴を呼びかけ、竹島問題について第三者の前で白黒つけようとしましたが、韓国は応じませんでした。韓国としては、「独島」をめぐってそもそも領有権紛争はなく、外交交渉も司法的解決の必要もないという立場です。韓国にとっての「独島」は、日本にとっての尖閣諸島と同じです。日本も尖閣諸島に関してはそもそも中国との間で領有権紛争は存在しないという立場をとっています。国際司法裁判所で裁判を開始するには、当事者である日本と韓国の双方が同意しなければなりません。そのためには、渋々でも韓国に裁判に応じさせる戦略を日本は考えていかなければなりません。

 これに対し韓国では国際世論の高まりにより、万が一「独島」について国際司法裁判所で日本と争うことになった事態に備え、どうやら政府内で密かに訴訟の準備をしているようなのです。これは韓国のしたたかな面です。双方、相手は感情的に反応しているだけだとタカをくくるのではなく、自分と同じくらいは知性と論理を持ち合わせているとして臨むことが重要です。

–パク・クネさんが大統領に就任して2カ月が経ちました。どういったキャラクターの人でしょうか?

浅羽 先の先まで見据えながら、一つひとつの行動を戦略的に選択してきた政治家です。「女性初」であるとか、1963年から1979年まで16年間大統領を務め、一部では独裁者とも批判された「パク・チョンヒ(朴正煕)の娘」であるといった個人の特殊なストーリーばかりに注目していると、彼女のしたたかさや、先を読んで戦略的に行動を選択するという本質を見落とし、足元をすくわれることになるでしょう。

–竹島問題や慰安婦問題について、彼女はどういった立場をとるのでしょうか?

浅羽 基本的には、イ・ミョンバク前大統領とそれほど変わらない行動をとるはずです。というのも、2011年8月に韓国の憲法裁判所は「慰安婦問題の解決に向けて何もしないのは違憲である」と断罪したからです。この判決は当時のイ・ミョンバク大統領だけでなく、韓国の大統領を未来永劫縛ります。パク・クネ大統領は三・一節(三・一独立運動を記念した祝日)の演説で、日本に対し「責任のある行動」を求めています。これはイ・ミョンバク前大統領の「責任のある措置」とほとんど同じ言い回しです。

 これに対し、日本政府は1965年に日韓が国交を正常化した際に結んだ日韓請求権協定で慰安婦問題はすでに解決済みで、アジア女性基金の設立など人道的な観点から努力をしてきたし、今後もそうするという立場ですが、韓国側では「法以前に国民情緒、感情の問題」と受け止められています。とはいえ、「責任のある行動」は「法的責任」そのものではありませんから、日本としても歩み寄れる余地はあります。

 しかし、韓国政府の求める水準が上がり、慰安婦を支援している団体と同じように「法的責任」となると、日本政府としては到底受け入れることができず、解決策がなくなってしまいます。韓国政府の要求の水準が上がらないうちに日本政府としては決着をつけなければならない。

 慰安婦問題は、嫌がる少女を無理やり連行したという「狭義の強制性」はなかったのかもしれませんが、プロパガンダやロビーイングの結果であるとはいえ、韓国政府の主張する「戦時における女性の普遍的な人権問題」として国際社会では広く認識されています。

 このように慰安婦問題にせよ、竹島問題にせよ、もはや日韓二カ国間の問題ではなく、いかに国際社会にアピールできるか、というゲームに局面が変わったことを我々は認識しなければなりません。

–最後に出版後の反響はどうでしょうか?

浅羽 韓国がどういう基準に基づき行動しているのかが分かれば、日本としてどういう行動をとるべきなのかについて戦略的に考えることができるようになります。そうした主旨を理解してくださる方からは「真の愛国者」という過分な評価を頂きました。そもそも、「朴槿恵時代の戦略を探る」というのは、韓国の戦略を知ることそのものが目的ではなく、そうすることで日本の戦略を探ることに主眼があります。しかし、前者だけが注目され、「反日」や「韓国脳」と揶揄されたこともありました。

 日本は自由な国ですので、いろんな方がいるものですが、カカシと戦って勝ったつもりになるのではなく、第三者の目も意識し、相手も少なくとも自分と同じくらいは知性と戦略と論理を持っていると見立てて、徹底的に準備をした上でゲームに臨むプレーヤーが増えればと願っています。
(構成=本多カツヒロ)

●浅羽祐樹(あさば・ゆうき)
1976年大阪府生まれ。山口県立大学国際文化学部准教授。北韓大学院大学校(韓国)招聘教授。専門は比較政治学、韓国政治、国際関係論、日韓関係。ソウル大学校社会科学大学政治学科にてPh.D(政治学)取得。

本多カツヒロ

本多カツヒロ

フリーランスライター、ご連絡はbonite396 アットマーク http://gmail.comまで https://note.com/honda52 執筆歴 Forbes JAPAN、Wedge、KAI-YOU Premium、ビジネスジャーナル、FINDERS、週刊実話、書籍での編集協力、オウンドメディア等多数
本多カツヒロ(a.k.a パニック本多)|note

Twitter:@bonite09

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