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ソフトバンク、米携帯会社買収に対抗馬、“異色”経営者対決の行方…借入金膨張懸念も

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ソフトバンク、米携帯会社買収に対抗馬、“異色”経営者対決の行方…借入金膨張懸念もの画像1ソフトバンク本社機能が所在する
東京汐留ビルディング
「Wikipedia」より/Itoshin87)
 ソフトバンク買収交渉を進めている米携帯電話3位、スプリント・ネクステル(Sprint Nextel)に対し、米衛星放送会社のディッシュ・ネットワーク(DISH Network)が255億ドル(約2兆4822億円)の買収提案を出した。ソフトバンクに思わぬ対抗馬が現れたかたちだ。

 ディッシュの買収案は、孫社長が提示していた買収額201億ドルを上回るもので、これにより、ソフトバンクの株価は4月16日、約10%下落した。ソフトバンクは同日午後2時半、株式取引時間中にもかかわらず「これまで合意した条件で7月1日には買収が完了する見込みだ」と異例のコメントを発表した。加えて孫社長は、4月30日、2013年3月期決算説明会で、ディッシュの買収案について「(1株当たりの対価など)不完全な計算で(スプリント株主を)間違った方向に導くことになる」と述べ、強気の姿勢を崩していない。

 では、ソフトバンクの買収戦略に待ったをかけたディッシュのチャールズ・アーゲン氏とは一体、どんな男なのか? 約1400万世帯の加入者を抱えるディッシュを率いるこの人物、実は孫社長に勝るとも劣らない異色の経営者なのだ。

 2001年、米ゼネラル・モーターズ傘下の衛星放送ディレクTVの買収劇においては、“メディア王”の異名を持つルパート・マードック氏との買収合戦に勝利している。その後、この買収はご破算になったが、アーゲン氏の名前は「マードックに勝った男」として全米にとどろいた。

 アーゲン氏がディッシュを創業したのは1980年。巨大なケーブルテレビ会社に対抗するため、アンテナを無料で配るなど果敢な戦略で加入者を拡大。一代で時価総額160億ドル(1兆5600億円)を超える米国有数のメディア企業に育て上げた。米誌フォーブスによると個人資産は100億ドルを超える。孫正義氏の個人資産は同じくフォーブスによると86億ドルであり、日本人トップはユニクロを展開するファーストリテイリング会長兼社長・柳井正氏の133億ドルだ。アーゲン氏は従業員には厳しく、「米国で最も意地悪なボス」というレッテルを貼られたこともある。2011年にCEOを退いた後も、発行済み株式の過半を持つ大株主として実権を握っている。

●ディッシュ、突然の買収へ名乗り出た理由

 2012年の売上規模を見ると、スプリントが350億ドル以上もあるのに対し、ディッシュは140億ドル程度しかない。小が大をのみ込もうというわけだ。今回の対抗買収により、合併後の会社は推定360億ドルもの借金を背負うとみられているが、そんな大きな賭けに出たのは、ディッシュの成長戦略に携帯電話というアイテムが欠かせないからである。

 主力の有料テレビ事業は、低価格のインターネット動画通信サービスの台頭で加入者が伸び悩んでいる。競合するケーブルテレビ事業者や固定回線の電話会社が、映像コンテンツ(テレビ番組・映画)配信とインターネット接続サービス、一部では携帯電話サービスまでバンドルして提供するケースさえある中で、今のところテレビしかないディッシュは不利な立場にあり、これを挽回するためにも、携帯電話サービスは喉から手が出るほど欲しい事業なのだ。

「携帯3位のスプリントと有料テレビ3位のディッシュが一緒になれば、それぞれの業界で2位や1位になれるチャンスがある」とアーゲン氏は語っている。テレビ、インターネット、携帯電話をまとめて提供するサービスが可能になれば、ケーブルテレビ大手や通信大手と同じ土俵で戦うことができると考えているのだ。

●ソフトバンク株主は買収合戦に消極的か

 アーゲン氏はかつてカジノで働き、プロのギャンブラーとして生計を立てていたのだが、一見無謀とも思える大規模な買収でも簡単に乗り出すのは、そのギャンブラーだった血がそうさせるのかもしれない。彼は自分たちの手に負えないほど大きな相手でも喜んで食いついていく経営者であり、そうでなければ衛星テレビ放送の会社をまったく何もないところから築き上げることなどできるはずがない。なんでも一番にこだわることと野心的な勢力拡大意欲、孫正義氏とアーゲン氏は似た者同士という見方もある。

 ソフトバンクが日本テレコム(3400億円)や英ボーダフォンの日本法人(1兆7500億円)を買収したときには対抗馬は現れなかった。しかし、今回は対抗馬の出現で、買収金額が引き上げられる可能性もあり、そうなればソフトバンクの借入金が膨らむ懸念がある。ソフトバンク株主は買収合戦を望んではいないとみられ、株価は弱含みになっている。

BusinessJournal編集部

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