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パナソニック、プラズマ撤退、BtoB事業シフトという“過去との決別”の行方

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 製造企業の利益の源泉には、

(1)製造利益:ものづくりの製造部門から得られる利益
(2)開発利益:企画・設計・開発部門から得られる利益
(3)サ-ビス利益:製品を媒介したサ-ビスを提供することで得られる利益

の3種類がある。従来は、製造利益がメインに考えられていた。しかし、先進国の製造業にとって今後大きなウェイトを占めるのは、開発利益とサ-ビス利益である。汎用性の高い家電製品やIT分野では、日本企業が中国・台湾・韓国の新興メ-カ-と厳しい価格競争をして、製造利益で企業の成長・存続を図っていくのはきわめて難しい。

 このことにいち早く気付き、iPhoneやiPadなど新製品の開発による開発利益と、それらの製品を使ったアプリケ-ション・サ-ビスの提供によるサ-ビス利益で高い利益率を確保し、高成長を遂げたのが米国アップルである。

 日本の家電メ-カ-が今後生き残っていくには、開発利益とサ-ビス利益のところで高い利益率を確保することである。技術の標準化が早く、製品の陳腐化が激しいコンシュ-マ-製品やIT製品の分野で新興国メ-カ-と競争して、利幅の薄い製造利益を確保して企業の成長・存続を図るのは難しい。同じ家電製品でも、製品寿命の長く利益率の高い白物家電(冷蔵庫や空調製品など)や、理美容家電・エコ家電のような、消費者の価値観やライフスタイルを変える新製品の開発で開発利益を確保することが必要になる。

 パナソニックの津賀社長は、今後の生き残り戦略として、家電以外の航空業界・自動車業界・医療業界などの企業ニ-ズに対応したBtoB事業の強化と、それらの製品・事業を通じて提供するさまざまなクラウド・サ-ビス事業(BtoBtoC)の展開に力を入れていくと言っている。確かにこれらの事業は、開発利益やサ-ビス利益の期待できる成長分野である。その代表的な企業事例が米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)社である。GEは、とくにジャック・ウェルチ社長時代に、儲からない家電などコンシュ-マ-事業を売却したり撤退して、BtoB事業に経営資源を集中して成功した。

●戦略転換に潜むメリットとデメリット

 BtoB事業への重点シフトには、メリットもデメリットもある。パナソニックがGEの変身を倣ったとしても、創業以来家電製品を通じて消費者に広く知られたパナソニックのブランドイメ-ジやブランド価値をどう維持するかである。確かに、BtoB事業に重点シフトしていけば、経営は安定し、財務内容も急速に回復するかもしれない。

 しかし、失うものも多い。当然、消費者や世間に対するパナソニックのブランドイメ-ジやブランド価値の存在感は確実に薄れていく。アップル社が消費者や世間に対してブラントイメ-ジやブランド価値の圧倒的な存在感を確保しているのは、消費者に直接訴求するBtoC事業で、人々の価値観やライフスタイルを一変させる画期的な新製品を開発し、魅力的なアプリケ-ション・サ-ビスを提供しているからだ。アップル社は倒産の危機に直面した際も、BtoB事業に逃げなかった。

 パナソニックの存在価値は、創業者の松下幸之助以来、家電製品の開発を通じてBtoC事業で消費者が喜び、満足する画期的な新製品やサ-ビスを開発してきたからだ。BtoC事業にとことんこだわり、この分野で画期的な新製品や魅力的なサ-ビスを開発することで、開発利益やサ-ビス利益の確保に努めるべきであろう。クラウドサ-ビス事業といっても、例えばいきなりエンタテインメント系のコンテンツサ-ビスを開発するのは同社にとって難しいだろう。1990年代に、米国ハリウッドのMCM買収の大失敗で証明されている。

 やはり長年の家電事業で培った経験とノウハウを生かして、消費者の視点から高齢社会を支えるような、生活者のさまざまな面を支えるライフサポ-トサ-ビスの開発に徹するべきであろう。経営安定や財務改善のため、BtoB事業に力を入れるのはいいが、あくまでも消費者の生活に密着したBtoC事業で画期的な新製品・サ-ビスを開発して、パナソニックのブランド価値や存在感を発揮すべきではないか。
(文=野口恒/ジャーナリスト)

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