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西武HDへTOBのサーベラス、偽計取引要請か 膠着続く複雑な事情と、和解の可能性

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 西武HDは、筆頭株主のサーベラスと12年5月から半年間にわたり、資本提携契約の解消交渉を進めていた。その西武HDは10月、「このままでは上場手続きが進展しない」(同社関係者)と判断、12年10月18日、同月29日までに資本提携契約の合意解約ができなければ、資本提携契約を一方的に解消すると通知。そして29日、東京証券取引所に株式上場の申請を行った。西武HD関係者は一方的に資本提携契約を解消した理由について、次のように説明している。

「資本提携契約の中で、株式上場に支障のある場合は、この契約をこちらから解除できるようになっている。そこで一定の催告期間を設けて契約終了を通知した」

 これに対し驚いたのがサーベラスだった。一方的な通告だったからだ。この点について
サーベラス内部では「株主を冒涜する行為だ」といった声があがり、両者の亀裂を一層深めた。

 そしてサーベラスは、西武HDに対するTOBと8人の役員派遣を決断した。

●上場を望んでいるという共通点

 一見、利害が真っ向から対立しているように見える両社だが、現実は複雑だ。

 西武HDもサーベラスも、いずれも株式上場を望んでいることは間違いない。だからサーベラスは上場審査に影響のないよう、過半数の株式買収には踏み切らなかった。買収すれば、向こう2年間は上場ができなくなってしまうからだ。東証の上場審査基準概要を見ると「合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行った場合又は2年以内に行う予定のある場合で、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合」(http://www.tse.or.jp/rules/listing/stlisting.html)と記されている。

「しかもサーベラスは日経平均株価が今年に入って急騰し、これまでかなり有利だといわれていた一株1400円でのTOBが成功するかどうかもわからなくなってきている」(証券業界関係者)

 日経平均株価はサーベラスがTOBを開始した3月12日の1万2314円(終値)から1万3782円(5月1日終値)と1468円も上がっているからだ。

 一方で西武HDも、サーベラスの協力なしには上場できない。3割以上の株を持つサーベラスだけが株を保有したまま主要株主が大量に株を放出し上場すれば、サーベラスにTOBを仕掛けられ、すぐに乗っ取られてしまう恐れがますます高くなってしまう。これでは元も子もない。

 むしろ日経平均株価の上昇が、両社の和解につながるのではないかという見方もある。サーベラスが昨年4月、10月にバリュエーションを取得しているが、当時に比べれば明らかに日経平均株価が上昇している。例えば、西武HDが上場申請した12年10月29日の日経平均株価8929円と比較しても、1.5倍以上になっている。上場企業のバリュエーションは、業種や資産内容など類似の業種の株価を参考に算出する類似業種方式を中心に、修正純資産方式やキャッシュフロー方式などを参考値として基準日の終値、あるいはそこから遡って3カ月、半年の終値の平均などから算出するやり方が一般的だ。日経平均株価が上がれば、類似業種の株価が上がる可能性は高い。

●西武HDはサーベラスを説得?

 事実、西武HDは今、サーベラスの経営陣と「株式市場が好調で、上場の好機であることを理由に説得を進めている」(西武HD関係者)という。

 だが、今回のTOBに詳しい関係者は、問題がそう簡単ではないと指摘する。

「サーベラスは上場時点で全株式を放出できるわけではないのです。大量に株が出回れば、市場が混乱しますから、何年かかけて売っていかなければならない。上場の時だけ高い株価がつけばいいというものでもないため、企業価値をきちんと高めていく必要があるのです。そのために、企業統治をきちんとしてほしいと言っているのです。つまり、経営陣が株主の利益をきちんと実現できる体制にするということです」

 つまりサーベラス側は、経営をチェックできる資本業務契約に代わる“お墨付き”を出せと、西武HDに言っているわけだ。一方で西武HD側も「経営陣の解任が本来の狙いなのではないか」(同社関係者)と疑心暗鬼になっているという。

 果たして両社の戦いは今後、どうなっていくのか。まだまだ目が離せない。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

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