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大手電力会社、多発する太陽光発電事業者への電力買取拒否の実態 再生エネ普及の壁に

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 太陽光発電事業者と電力会社の契約をめぐるさまざまな問題は、以前から漏れ伝えられていたものの、太陽光発電事業者は弱い立場に置かれているため、公にその不満を口にすることはできなかった。自然エネルギー財団はその点を考慮して、匿名でアンケートを実施したところ、電力会社のあこぎな実態が浮かび上がったというわけである。

 経済産業省のOBはアンケート結果を見て、次のように話す。

「電力会社の中でも昔からひどかったのは、東北電力と北海道電力。新しい電気事業者の接続なんて最初から受け付ける気がなかったようにすら見えた。中部電力も九州電力もひどかったけど、こう言ったら電力会社全部になってしまう。ただ、東京電力なんかは他に比べればマシなほうで、結局、首都圏は電力の大消費地だから、電気事業者から買っても消費されるということですね。それに、オール電化住宅を推進していたということもあるでしょう」

 さて、太陽光発電業者などが不利な立場に置かれた場合、実は、その旨を訴えるための仲裁機関がある。電力系統利用協議会(ESCJ)という一般社団法人だ。ESCJのWebサイトの事業概要には「相談、苦情、紛争解決」とある。そして「送配電等業務の公平性・透明性確保の原則、関係法令、上記ルール等に基づいて、送配電等業務の円滑な実施を確保するために必要な相談、苦情の処理、あっせん、調停および指導・勧告を行います」と書いてある。

 このESCJが正常に機能していれば、太陽光発電事業者らの不満も解消されたのだろうが、実際にはまったく機能していない。中立機関であるにもかかわらず、何を申し立ててもほとんど電力会社寄りの解決しかしないことで知られているからだ。前出の経産省OBはこう説明する。

「ESCJは04年2月に有限責任中間法人として設立されたのですが、理事の何人かは六ヶ所村の再処理施設工場の視察に招待されて、その後に浅虫温泉(青森県)で大変な接待を受けていたのを覚えています。だから、皆さん原発賛成派です。昔はなかなか良い論文を発表していた人たちですが……。ESCJは『電力自由化のフェアプレーのために』なんて看板を掲げていますが、実態はまったく逆で、電力自由化の阻害要因です」

 ESCJの役員や職員は電力会社から出向してきた人や電力会社の息のかかった人ばかりだというから、これでは太陽光発電事業者も相談する気にさえならないだろう。

●発送電分離も骨抜きの懸念も

 さて、安倍内閣では先月、「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。家庭が電力会社を選べる電力の小売りについて、2016年をめどに全面自由化する方針だ。大手電力の発電部門と送配電部門を別会社にする発送電分離についても2018~20年をめどに実現を目指すという。

 報道された内容を見ると、かなり前進している印象を受けるが、このまますんなり電力自由化が進むかどうかは未知数だ。とくに発送電分離は注視していかなければならない。改革派官僚として知られた古賀茂明氏は2年前、筆者のインタビューに対し、電力会社を単純に発電会社と送電会社に分けるだけでは不十分だと言っていた。

「電力会社を発電と送電に単純分離しても、発電会社は巨大なまま残ってしまう。また、例えば東電を“東京発電”と“東京送電”に分離しても、兄弟会社やグループ会社のような資本関係が残れば、送電網は“東京発電”に有利な使い方になってしまい、公正な競争にはならない。“東京発電”をいくつかに分割して売却すれば、東電のDNAを薄めることができる」

 なお、ESCJに代わる本当の意味で中立な送配電ネットワーク監視機関が必要であることは言うまでもない。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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