NEW
幻となった三井造船との経営統合

川崎重工、社長解任クーデターの舞台裏 社内抗争が三井造船との統合破談騒動に発展

【この記事のキーワード】,

 幻の経営統合となってしまった三井造船側の痛手は大きい。三井造船は造船部門が売り上げの半分を占める。造船の構造不況の直撃を受けて2013年3月期決算は11年ぶりに連結税引後利益が82億円の赤字に転落した。川崎重工のクーデター派が「三井造船と合併してもメリットはない」と主張している背景には三井造船の脆弱な経営体質がある。川崎重工の合併推進派は「三井造船の子会社の三井海洋開発は大きな魅力だ。将来的に(三井造船の)造船は切り捨ててもいい」と考えていたフシがある。三井海洋開発は三井造船が50.1%、三井物産が14.9%出資している浮体式の原油生産貯蔵設備(FPSO)の専業大手である。

 日経は『新たな提携不可欠 三井造船、海洋開発強みに』(日経6月14日付企業統合面)と書く。「三井造船が海洋開発を前面に打ち出して他社との交渉に臨めば、新たなM&A(合併・買収)が実現することも考えられる。」「三井造船は27日に株主総会を開き、田中孝雄常務が社長に昇格する。新社長は就任早々から、積極的な再編策を打つことが求められそうだ。」川崎重工の合併推進派の主張と日経の報道は軌を一にする。

「国内の経済メディアは一強皆弱ともいえる、いびつな構図になっている。圧倒的なマンパワーで国内の経済ニュースを寡占している日経とその他大勢――」(週刊ダイヤモンド)。

 日経に『川重・三井造船 統合交渉』をリークしたのは誰なのか? 合併推進派が日経に書かせて、ほかの全国紙に後追いさせて(事実、4月22日の夕刊で各紙とも後追いした。日経の1面トップの記事だから無視できなかったのだろう)、合併を既成事実にしようとしたとの見方が根強くある。

 6月26日の株主総会前に、35分間で成功するようなクーデターが起きたのは、合併推進派の長谷川・前社長が株主総会後に取締役を入れ替えて、新しい経営陣のもとで合併推進を決めようとしたことが原因だ。合併阻止派がこれに先手を打った。クーデターを主導した大橋会長も、今回の株主総会で退任することになっていた。

 松岡副社長は6月13日の記者会見で「(合併しても)企業価値の増大につながるようなシナジー(相乗効果)がない」と断言した。「統合交渉しているという報道が出た後、市場は統合価値の向上につながらないと反応した(株価は報道後、24円下落し、6月13日の終値も306円、17円安と低迷した)。ほとんどの取締役も、そういう印象を持ったのではないか」と述べている。合併が白紙還元されたとたんに川崎重工の株価は反発した。一方、三井造船の株価は下げた。

 合併をテコに勢力を拡大しようとした役員を、主流派の鉄道車両、航空機・宇宙部門の役員が葬り去った。これがクーデター劇の真相である。

●クーデター直後に流れた情報を吟味する

 朝日新聞(6月16日付朝刊)は「事前に大橋忠晴会長が長谷川聡社長(当時)に辞任を迫っていたことがわかった。経営陣の対立が表面化することを避けるため。ただ、三井造船との統合に積極的な長谷川氏はこれを拒否。13日の臨時取締役会の解任につながった」と報じた。

 日経(6月15日付朝刊)は解任劇の底流に社長の椅子争いがあるとした。「総会後には大橋忠晴会長が退任し長谷川氏が筆頭の取締役になる」「全ては株主総会が終わってからと長谷川氏は周囲に漏らしていた。26日の株主総会で自らの立場を盤石にしてから統合交渉を進めるという意味だ」。

RANKING

17:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合