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西武HDへTOBのサーベラス、株主総会直前で露呈した矛盾…西武再上場のカギとは?

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 経営権も取らない、役員の入れ替えもしない、プロキシーファイトもやらないとなると、ガバナンスが問題だとは実は大して思ってはいないのではないか、本気でガバナンスの正常化に取り組もうという気もないのではないか–。こういった疑問はサーベラスの立ち位置がもっとはっきりしていれば沸かない疑問だ。

●負け惜しみにも聞こえる「TOBの結果に満足」

 17日の会見に出席した、サーベラス・グループのアジア地区の責任者であるルイス・フォースター氏は、記者からわずか3%強の応募に留まったTOBの結果についての感想を聞かれ、「満足している」と回答した。「株主の声が聞けた、サーベラスに期待するから株を持ち続けるという株主もいた」と、その理由を縷々と述べたものの、結局のところ負け惜しみに聞こえる答えしか出てこなかった。

「上限を設けていると、上限以上の応募があれば比例按分がかかって応募者全員の株を買えなくなる、だから上限の枠は高めに設定したのだ」というわけだが、そもそも最初に買付の上限を4%(TOB終了後で36.44%)という意味不明な比率に設定した合理的な理由を、サーベラスは説明できていない。3月27日のサーベラスの会見の席上、同席していた岩倉正和弁護士が「予算が800億円だったからと言えば」というアドバイスを登壇者の鈴木喜輝サーベラスジャパン代表にしているが、それが果たして事実なのかどうかも不明だ。

 8年半前に西武鉄道の上場廃止が決まった際、整理ポストでの売買期間中に、西武鉄道の株主数は劇的に増加した。もともと堤家による支配で浮動株が極端に少なく、04年3月末時点の株主は7000人弱しかいなかったが、上場廃止後の05年3月末時点では1万2000人強に増えた。その増加分の大半は個人だ。

 流動性を失っても保有できる法人は西武グループと特別な利害関係を有する先に限られる。ゆえにサーベラスも法人株主からの応募はそもそもほとんど期待していない。一方サーベラスが応募を期待した個人は、その保有目的となると実にさまざまだ。

 西武グループはかねてから縁故中心の採用方針だったためか、堤家の支配から解放された今も、会社への社員のロイヤリティは高いといわれ、グループ社員のOB、親族などは会社への強いロイヤリティゆえに株式を保有している。

 上場廃止後も株主優待を継続したので、西武線の乗車券やライオンズの観戦チケット、プリンスの割引券など優待狙いの沿線住民は、この値段を出すから売ってくれと言って簡単に応じてくれる相手ではない。

 再上場狙いで整理ポスト期間中に西武株を取得した投資家は、経済合理性で行動してくれる代わりに生半可な価格では売却に応じない。TOBをやろうというのだから、株主名簿を閲覧していないわけがないが、名簿を見ただけで株主の属性がわかるわけではない。一連のサーベラスの行動を見る限り、株主の属性分析を行ったようには見えないし、ましてその属性に見合った応募勧誘を行ったようにも見えない。8年もの時間がありながら、株主の属性情報すら入手できていなかったのだとしたら、その理由も聞いてみたい。

●総会後も膠着状態は続くのか

 来る6月25日の株主総会で、サーベラス推薦の取締役が“当選”する可能性は、大方のゲバ票ではあまり高くない。そもそも支配権も取らず現経営陣もクビにしないというのだから、総会決議の結果にかかわらず劇的なガバナンスの変化が起きる可能性は低い。

 そうなると次なる関心は、この膠着状態をいつ、誰がどう打開するのかという点に移る。

 サーベラスのスティーブン・ファインバーグCEOは超ワンマンのカリスマ経営者として知られる人物である。サーベラスの意思決定権はファインバーグ氏のみが握り、他の幹部が持つ権限は極めて限定的といわれる。

 6月17日の会見の席上、記者からサーベラスとしての日本における累計の投資額と投資先、それにここまでのトラックレコードを質問され、アジア統括の責任者であるはずのルイス・フォースター氏は回答できなかった。会見の目的と異なる質問なのでデータを用意していない、というのがフォースター氏の回答だったので、「答えなかった」のではなく「答えられなかった」、つまりは頭に入っていなかったということになる。

 正確な数字は一切出ず、投資先もあおぞら銀行の名しか出ず、世間を騒がせた昭和地所も、ダイア建設も長崎屋も木下工務店も、そして国際興業の名すらも出なかった。

 記者は有能なビジネスパーソンと数多く接する機会を持っている。自社の誇るべき実績をたとえ不意打ちでも数値で語る程度のことは、場合によれば部課長クラスでもできる。だが答えられないフォースター氏に鈴木氏が助け船を出すこともなかった。つまり権限らしい権限は、アジア統括クラスの幹部でも与えられていないということなのだろう。

 ダン・クエール元米副大統領など、トップクラスの幹部にどの程度の交渉権限が与えられているのかも不明だ。つまりは事態を打開するには、西武HDはファインバーグCEOと直接交渉の場を持つしかないということになる。

BusinessJournal編集部

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