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取締役会を切り抜けた西武

西武HDの経営支配騒動の副産物!? 海外ファンドへの対抗策とは?

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西武西武HD傘下のプリンスホテルが運営する
「ザ・プリンス・パークタワー東京」
(『Wikipedia』より)
 西武ホールディングス(以下、西武HD)が米投資ファンドのサーベラスと経営支配権をめぐり、熾烈な争奪戦を繰り広げていた件で、6月25日に株主総会が開かれ、サーベラス側の提案は賛成少数で否決された。

 西武HDの取締役会は、引き続き「会社側」の取締役が過半数を占め、サーベラスが経営を支配する可能性がいったん遠のいたわけだが、西武HDがその株主総会に向けて、株主に配布した小冊子が各企業から評判を得ている。

 株主総会では、同社が自ら推薦する取締役候補者とサーベラス側の推薦する候補者について、株主による信任を受けることになっていた。株主総会前の西武HDの取締役は9人で、このうち2人はすでにサーベラスから推薦を受けて取締役に名を連ねていた人物。この9人のうち、サーベラスから推薦を受けた取締役1人と西武HD側の1人の計2人が任期を迎える。このため、新たな取締役候補の推薦などを行わなければ取締役は7人で、このうち1人がサーベラスから推薦を受けた人物となる。

 これに対して、サーベラスは株主総会に向け、任期を迎える1人の再任を含めた8人を候補者として推薦した。

 つまり、15人のうちサーベラスの推薦した8人に加え、従来からサーベラスの推薦を受けて取締役だった1人の計9人が取締役となり、完全に取締役会を支配して経営権を握ることができるようになる。

 そこで西武HD側は株主総会に向け、4人の新任取締役候補者を立てた。これにより、従来からの7人に新任候補者4人を加えた11人を推薦した。

 この結果、株主総会での取締役候補者の新任は、サーベラス側の提案が認められれば取締役15人中9人がサーベラス側の推薦者となり、西武HD側の提案が認められれば11人中1人がサーベラス側の推薦者という“二者択一”の戦いとなった。

 通常、一般株主が株主総会において議決権を行使する割合は非常に低い。経営に強い関心を持っていなければ、一般株主は株価や配当、株主優待などにしか興味がなく、議決権を行使することはない(ほとんどが棄権してしまう)。

 しかし、西武HDにとっては、一般株主に議決権を行使して自らの推薦する取締役候補者に信任を与えてもらうことが“死活問題”だった。そこで西武HDにとって非常に重要となったのが、一般株主による信任をいかに獲得するかという点。このために作られたのが、冒頭の小冊子だった。

 冊子は表紙に「株主総会で当社をご支持いただける株主の皆さまへ ぜひご一読のうえ、会社提案には賛成、株主提案には反対してください」と書かれている。そして、最初の西武HD後藤高志社長のあいさつでは、「サーベラス・グループによる取締役・監査役の選任の株主提案が審議されるなど、当社の今後の経営体制を決する重要な株主総会です。ぜひ、会社提案には賛成票を、株主提案には反対票を投じていただきたく、よろしくお願い申し上げます」と述べられている。

 さて、ここまでならば、よくある株主総会での会社側提案に賛成を求める文書と変わらない。だが、西武HDの小冊子が違っていたのは、議決権行使の仕方を懇切丁寧に説明したところ。

 株主総会への出席の仕方、委任状を返送する場合、議決権行使書を返送する場合、インターネットを利用して投票する場合などについて、実際の書類を大きく表示した上で、その書き方(会社側提案への賛成、サーベラス側提案への反対)をわかりやすく、具体的に説明した。これにより、無関心だった一般株主の議決権行使(委任状の返送)率が非常に高まった。これが、西武HDの小冊子がほかの企業から評判を得た点だった。経営権の争奪戦という株主総会での防衛策が、思わぬ“副産物”を産んだ形だ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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